2005年


受賞報告


「環境共生/生命環境研究部門」の今井教授のグループは、4th Kochi Medical School Research Meetingにおいて
「奨励賞」を受賞されました(2005年2月)。
受賞テーマ: Rashel M, Matsuzaki S, (他3名),
Imai S. Cell wall hydrolase from fMR11 phage: a new powerful therapeutic agent against MRSA/VRSA infections


本研究は、医療で深刻な蔓延をきたしている多剤耐性黄色ブドウ球菌(MRSA、VRSA)感染症に対し、 抗生物質に依存しない
新規の治療法開発に関する基礎的研究である。 この研究では黄色ブドウ球菌特異的な バクテリオファージ(ファージ)多数から、
強力な溶菌活性をもつファージ(fMR11)を厳選し、 さらにfMR11ゲノムにコードされる溶菌酵素遺伝子(orf65)を特定、
クローニングし、溶菌酵素の活性精製体の 単離に成功した。
この精製酵素はin vitro でわずか30秒以内に全ての臨床分離MRSA、VRSA株を完全に殺滅した。
これらにより、脱抗生物質療法の新たな可能性を示した点が評価された。



「物質循環/資源再生研究部門」の柳澤教授が第59回日本セラミックス協会・学術賞を受賞されました(2005年5月)。
受賞テーマ:水熱反応技術の新しい展開に関する研究


柳澤和道氏は,長年にわたる水熱反応に関する研究過程で,以下に示す3種類の
新しい水熱反応技術を開発し, 新しい水熱合成法を展開した。

@単結晶育成技術では,カルサイト単結晶の水熱育成に初めて有機酸塩水溶液を使用し,温和な条件で
高い成長速度が得られることを示し,カルサイト単結晶育成の工業化に道を開いた。
A複酸化物の直接合成技術では, 中間生成物を経ることなく目的化合物を直接合成できる高温混合法を開発した。
この方法により,短時間での ゾノライト単結晶合成や結晶性の高いマグネシウム固溶
カルシウム水酸アパタイト合成に成功した。
B多孔体の作製技術では,水熱条件下にある粉末を加圧しながら水熱処理することにより,
マクロポアとメソポアの 境界付近の均一な気孔径を有する多孔体を作製する新しい合成技術を開発した。
さらに,水熱反応を利用した廃棄ガラスビンから発泡多孔体を作製する廃棄ガラスビンのリサイクル技術を開発した。
以上の業績から水熱反応技術の新しい展開に関する研究は,国内外で高く評価されており,
日本セラミックス協会学術賞に十分値するものとして推薦された。

海外出張報告


「物質循環/資源再生研究部門」の蒲生教授を含む本学教育学部および
大学院教育学研究科の教員2名および学生8名は,
2004年度ACCU・ユネスコ青年交流信託基金事業「大学生交流プログラム」に採択され,
国際理解教育と環境教育に関するプログラム遂行のため,2005年3月26日〜4月9日まで
ベトナムに出張した。本学初となるこのプログラムの目的は,ベトナムにおける世界遺産視察と,
ハノイおよびホーチミン大学生との文化交流を通じて,世界遺産の教育教材化への提言と,
実践的環境教育プログラムの提言を行うことにある。

       Field trip to the World Heritage “My Son Sanctuary”

「機能開拓/機能評価研究部門」の椛教授は,
化学受容科学連合(Association for Chemoreception Sciences: AChemS)に出席し,
“マウスにおけるフェロモンの記憶を電気生理学的手法で証明した成果”について発表した。
本会は,米国に本部を置き,嗅覚,味覚などの化学感覚を専門とする世界の約800人余りの会員で
構成されている。毎年4月にフロリダ州サラソタで開催される年次大会は,基礎,臨床,応用研究の
最新の成果を発表し,意見交換を行うための非常に重要な場となっている。毎年,約500題の演題が
発表されている。今年は4月13日から5日間の日程で開催された。朗報として特筆すべきは,
この研究領域から2004年のノーベル賞受賞者が出たことである。
受賞されたAxcel教授とBuck教授の栄誉を讃えて,最終日の終日を使って
嗅覚受容体シンポジウムが特別企画された。
Buck教授の講演に始まり,それに現在活躍中の若手研究者の講演が続き,最後にAxcel教授の
講演で閉めるというものであった。特に感銘を受けたのは,何をどういう方法で解明するかについて,
論理的かつ明解に,しかも要点を強調し,ユーモアを交えながら話を展開されたAxcel教授の講演であった。
その他の講演,ポスター発表の中で特に興味深かったものに,未熟児の無呼吸がバニラのにおいによって
軽減すること,アワビの精子が卵子から発せられる性誘引物質トリプトファンを手がかりに卵子へ
向かって泳ぐメカニズムが解明されたこと,マウスの鋤鼻器で同定されているフェロモン受容体V1Rが
ヒトの嗅上皮にも発現し,においの受容に関わること,MHC分子が個体に特有なにおいとして機能している
ことなどが挙げられる。

平成17年度科学研究費等補助金採択状況

科学研究費・特定領域研究

本家孝一「硫酸化糖脂質の役割と欠損による病態」 2002〜2006年度 49,000千円
市川善康(代表),小槻日吉三(分担)
「シグマトロピー反応をもちいた生体機能分子の実用的合成」 2005年度 3,400千円
椛 秀人「匂いの絆:その刷り込みのメカニズム」 2005年度 4,100千円
奥谷文乃(代表),椛 秀人(分担)
「主嗅球神経回路における可塑性の多角的解析」 2005年度 2,400千円

科学研究費・基盤研究B

椛 秀人「記憶痕跡の動的変化の分子メカニズム」 2004〜2006年度 14,900千円
市川善康(代表),小槻日吉三(分担)
「特異な構造をもつ含窒素天然物の合成研究」 2005〜2008年度 15,300千円
中村裕之「環境中物質と好酸球関連蛋白遺伝子の相互作用解明によるアレルギー疾患の予防」 2005〜2007年度 13,500千円
川合研兒(代表)、大嶋俊一郎(分担)
「魚類エドワジェラ症原因菌のGAPDHの抗原構造と免疫賦活能に関する研究」 2005〜2007年度 16,000千円
北野雅治(代表)、吉田勝平(分担)
「植物生産システムにおける環境ストレスの回避と応用およびその効果の評価」 2005〜2007年度 16,000千円

科学研究費・基盤研究(C)

脇口 宏(代表),今井章介(分担)
「慢性活動性EBウイルス感染症の新規治療法に関する研究」 2004/2005年度 3,600千円
今井章介「EBウイルス依存性に発現変化する細胞遺伝子群の網羅的解析」 2005/2006年度 3,600千円

科学研究費・萌芽研究

松崎茂展(代表),今井章介(分担)
「新規黄色ブドウ球菌特異的溶菌因子による MRSA/VRSA 除菌・治療法の開発」 2004/2005年度 3,300千円
遠藤文香(代表),今井章介(分担)
「新規黄色ブドウ球菌特異的溶菌因子による MRSA/VRSA 除菌・治療法の開発」 2004/2005年度 3,300千円

科学研究費・若手研究B

上田忠治「電気分析化学的アプローチによる生体内微量金属の生理活性作用発現機構の解明」 2003〜2005年度 3,700千円

科学研究費・特別研究員奨励費

隈本康司(小槻日吉三)「超高圧反応を基軸とする環境調和型有機合成反応の開発」 2005/2006年度 1,800千円
厚生労働科学研究費補助金 中村裕之「気管支喘息の有病率・罹患率およびQOLに関する
全年齢階級別全国調査(免疫アレルギー疾患予防・治療 研究事業)」2004/2005年度 3,200千円

戦略的創造推進事業/科学技術振興機構

渡辺 茂(分担)「高信頼性ナノ相分離構造テンプレートの創製」 2002〜2008年度 12,690千円
本家孝一(代表),宇高恵子(分担),今井章介(分担)
「病態における膜マイクロドメイン糖鎖機能の解明」 2004〜2009年度 225,000千円

RSP事業/科学技術振興機構

吉田勝平「波長選択光吸収・発光性色素の創出と農園芸フィルム開発への応用」   2004年度 2,100千円
吉田勝平「波長変換型フィルム用発光色素の開発と農業への応用研究」   2005年度 4,100千円
大嶋俊一郎「魚類冷水病のワクチン開発に関する研究」2003〜2005年度 6,400千円

経済産業省(NEDO)・大学発事業創出

大嶋俊一郎「魚類の冷水病に対するワクチンの開発」2003〜2005年度 15,120千円