高知大学 農林海洋科学部 大学院 総合人間自然科学研究科農林海洋科学専攻

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高知だからできる! 微生物研究最前線

食品の機能性物質を探索

現場と大学を往復
地域食材の機能性を探る

島村 智子 准教授

[専門領域]食品化学、食品機能化学

[研究テーマ]
 ●メイラード反応 (食品成分間反応) に関する研究
 ●食品中に存在する機能性成分の解明と有効利用
 など



地域食材の機能性を探る

 日本の西南暖地に位置する高知県では、その環境を活かして様々な農産物が生産されています。生産量日本一のショウガ、ニラ、ナスの他、ユズやミョウガなど独自の食材も多く、それら地域食材の持つ機能性は、産業や地域の活性化に直結する大切な"価値"と言えます。私たちの生物資源利用化学研究室では、そういった食品の機能性の探索や分析、評価に日々取り組んでいます。


地域や企業と一緒に研究

 私たちの研究室の場合、研究には必ずといっていいほど共同研究相手がいます。  そもそも"地域の大学"である高知大学には、地域と大学をつなぐ拠点「次世代地域創造センター」があり、教員が地域コーディネーター(UBC)として県内7カ所のサテライトオフィスに常駐して地域課題の掘り起こしや助言を行っています。その仕組みを通じて研究依頼が入ってくるんですね。現在、県内の様々な地域をフィールドに、多彩な研究や協働プロジェクトが動いています。また継続的な研究として、地域で作った農産物を定期的に調べ、季節変動や栽培方法、収穫時期などによって機能性がどう変化するのかを調べたりしています。

化学的アプローチで地域と協働!
「四万十町産ショウガの分析プロジェクト」

 高知県西部の四万十町は、県内でもショウガの収穫量が多い地域。しかし、これまで四万十町産ショウガについて詳しく分析したデータは一切ありませんでした。そこで、当研究室が辛味成分であるジンゲロールやショウガオールといった機能性成分を分析。四万十町産ショウガの代表的な数値や成分の特徴を把握することができました。また、収穫後保存したショウガが一年を通じてほとんど成分変化が起こっていないことも確認。品質がしっかり保てていることを証明しました。
 この研究、実は化学分析だけにとどまらず、商材開発やHPでの情報発信などマーケティングの領域にも関わりが広がり、地域と協働する研究のモデルケースになりました。頻繁に現地に通い、生産者さんや行政、JAの職員、料理の専門家など様々な人とディスカッションしたことは、学生たちにもいい勉強になったと思います。

研究活動の様子

(左)四万十町でのショウガ収穫風景
(右)「しまんと生姜収穫祭」には学生たちも参加

高知の伝統食材が、アジアとつながる!
「後発酵茶の出会い ― 大豊町・碁石茶とタイ・ミエン」

 四国山地中央にある大豊町で古くから生産されてきた後発酵茶「碁石茶」は、高知県特有の伝統食品の一つ。私たちは研究の結果、この碁石茶に緑茶や赤ワインと同等、あるいはそれ以上の活性酸素消去活性(抗酸化活性)があることを明らかにしました。
 実は、タイ北部のチェンマイにも同じような後発酵茶「ミエン」があり、伝統食品として大事にされています。

高知とチェンマイの発酵茶

(左)高知県の伝統食材「碁石茶」(右)チェンマイの伝統食材「ミエン」

 こういった伝統食材は、ローカルウィズダム(その土地の知恵)ともいえる貴重な地域資源です。そこに化学的な目を入れて高付加価値化していくという私たちの碁石茶プロジェクトに、チェンマイ大学理学部のKate Grudpan教授が共感くださり、タイでミエンの高付加価値化プロジェクトが立ち上がりました。
 そして一緒にコラボしようとなり、現在は大学間協定を結んで年に1回程度、相互交流を行っています。また、後発酵茶シンポジウムをタイと高知で交互に開催しています。
 後発酵茶のルーツは、中国・雲南省の「プーアール茶」。そのすぐ南に位置するミャンマーには「ラペソー」という発酵茶があり、四国にも「石鎚黒茶」や「阿波晩茶」など他の後発酵茶があります。化学の目線だけでなく、歴史や文化など違う角度からもつながっていくのが興味深いと思いませんか?

発酵茶シンポジウムの様子

(左)タイの後発酵茶シンポジウムでお話されるKate Grudpan教授
(右)島村先生率いる高知大学チームも発表

基礎と応用、ラボと社会を結びつけていく

 私自身、研究のプロセスの中で一番楽しいのは、グラフを作っている時です(笑)。その根っこはずっと変わりませんが、研究活動を通じて見た世界、感じさせてもらった世界によって、自分が変化していることを感じます。"私は研究者だから"と自らを縛るのではなく、視野が広がったり新たな体験をして学びを得たりしたら、誰かに還元すべきだし、伝えていかないといけない――最近はそう思って研究活動や教育に取り組んでいます。

タイのミエンミュージアム

タイのミエンミュージアム

 先に紹介したチェンマイ大学の人たちはすごく活動的で、「ミエン」の研究だけでなく、生産地を整備し、ミュージアムを作ってエコツーリズムを盛り上げていて、その結果、その土地を訪れる人がすごく増えていました。最初は高知大学がお手本だったのに、今はこちらが見習うべき点が多いのです。私たちも地域の大学として研究と社会を結びつけ、地域の産業発展や人々の健康増進に貢献していきたいと考えています。



コラム 先生に気になることを聞いてみました

Q. 農学への入り口は?
A. 果物のフレーバーをもっと自然にしたいという
  思いです!

 高校生の頃から食品の分析に興味を持っていました。入学時、大学でやりたいこととして「バナナフレーバーや苺フレーバーをもっと自然にしたい!」と書いた記憶があります。身の周りにある食品をもっといい感じに作り直したい、という思いでしたね。
 大学時代は、牛乳中の成分を調べる研究に取り組み、その面白さにハマりました(笑)。気がついたら博士課程まで行っていましたね。



学内では最多人数!?
食品化学がテーマの研究室

 学部・修士・博士課程あわせて19人が在籍する、生物資源利用化学研究室。指導教員は、食品分析や食品機能化学が専門の島村智子先生と、フレーバーや未利用資源を中心に研究をしている柏木丈拡先生の2人です。
 オンとオフのメリハリを大事にする島村先生のモットーもあり、学生たちもオンタイムの9時から5時まではそれぞれの実験に集中します。実験室は複数あってみんな散らばっていますが、3時頃になると自然に先生の研究室へと集まってきて、休憩のティータイムになるのだとか。仲のいい大家族の研究室です!

研究室の学生みんなと