座学だけじゃない Open Labo 飛び出す研究室ライフ

果樹園芸学研究室

みかん、文旦、小夏などのカンキツ類、マンゴー、ブルーベリー、桃、柿など様々な果樹の栽培技術や品質向上、付加価値化に関わる研究に取り組む。地域からの様々な依頼に応え、果樹のあるところならどこへでも飛んで行く( ? ! )アクティブな研究室。
尾形 凡生 おがた つねお 教授
専門領域:熱帯果樹園芸学、暖地果樹園芸学
研究テーマ
熱帯・暖地性果樹における無核果実の作出と
 品質向上に関する研究
接ぎ木による樹体成長制御メカニズムの解明
寺元 充彦 てらもと みつひこ
修士課程2年(取材時:平成25年度)
中山間に飛び出す!
どんなフィールドで研究活動されていますか?
尾形
 果樹園芸学研究室では、特に高知県の新たな特産品となるような果樹、あるいは高知県の環境に適した果樹の開発などを意識して研究に取り組んでいます。キャンパスに隣接する果樹園でもたくさんの種類の果樹を試験栽培していますが、実際に県内の複数の地域で実践研究に取り組んでいます。その一つ、大豊町の怒田(ぬた)という地域に入らせてもらっているのが、寺元くんです。
寺元
 僕は、大豊町の怒田(ぬた)をフィールドに、棚田を有効活用したキウイフルーツの栽培について研究しています。怒田は、大学から車で1時間ほどの四国山地の山の中にある集落です。山の斜面には一面、棚田が並んでいますが、過疎高齢化が進み、現在は農業の担い手も減ってあまり利用されてない状況です。そこで、ツル性の植物であるキウイを棚田の急斜面を這いずり登らせることで、効率よく栽培できないかと考えました。今、地域の方から畑をお借りして、試験栽培を行っています。

大豊町怒田のキウイの試験畑

フィールドと大学を往復!
どれくらいの頻度でフィールドに出ているのですか?
寺元
 僕の場合、夏場はキウイの枝がよく伸び、草も生えるので、週に一回ほど管理作業に通います。冬場だと一ヶ月に一回くらいです。他にも、集落の草刈りなど地域の行事がある時なんかに泊まりがけで行ったりしています。
尾形
 地域のみなさんが本当によくして下さるんですよ。ご厚意で農家の離れを宿泊所に提供いただいたりもしています。寺元くんの他にも、農学部からはブルーベリーの栽培や焼畑、小水力発電などの研究をやっている学生が通っていますし、人文学部の学生もたくさん来ていますよ。
寺元くんのある週のスケジュール
大学院では毎日が研究中心! 研究室全員参加の果樹園での共同作業とゼミ以外は、研究に専念できます。
僕の場合は主に大学とフィールドとの往復ですが、野菜を研究している人は毎日ハウスの管理を行ったり、化学系の人なら夜遅くまで実験室にこもったりと、時間の使い方は人それぞれです。
ゼミ風景
新たな特産品を目指して
研究のポイントを教えて下さい!
尾形
 キウイはブドウなどと違って、枝そのものが他の植物にらせん状に巻きついて伸びていくんですね。だから、一度ガチッと巻きついてしまうと動かしようがない。しかも、どっちに伸びればいいのか迷って枝がこんがらがり、栽培しにくいというのが悩みなんです。
寺元
 そこで、平地ではこんがらがって形が乱れるけれど、斜面を活用すればもっとスイスイと伸びていくんじゃないかという仮説を立てました。制枝作業が簡略化できれば、高齢化した集落でも特産物として栽培していけるんじゃないかなと考えたのです。でも実際は、なかなか思うようにはいかなくて・・・(笑)。1、2年では目に見えた効果は確認しにくいのかもしれません。今は、なぜキウイはこんな面倒な成長の仕方をするのか、というところまで一旦戻って先生と一緒に改善策を探っているところです。
尾形
 キウイはもともと病気が少ない上に収穫してから甘くなるので、カラスやシカなどに食べられにくいという特徴があります。ですので、近年、中山間地農業の大きな悩みである獣害も、キウイならばある程度平気だろうと思います。

キャンパスに隣接する果樹園での試験栽培。
斜めに這い登らせることで枝の乱れが多少改善されているが、
目に見えた成果を得るには引き続き実験が必要だ。
コラボは様々な地域と!
他にはどんなフィールドで活動されていますか?
尾形
 県西部の黒潮町の山野に自生している野生栗である大師栗に関する調査
を、地元農家による研究会や自治体と一緒に進めています。大師栗は甘く
ておいしいので、地元では昔からよく食べられていたのですが、実が小さ
いので青果としての商品化は難しいかもしれない。ただ、一枝に果実が連
なってつき、また、イガがきれいな赤色をしているものもあるので、地域
では、生け花の素材としての商品化に成功しています。生け花用切り枝出
荷には棚持ち(出荷してからの日持ち)が重要なので、それを延ばす技術
について今後共同研究を行う予定です。
 現在、大師栗は園地で栽培されていますが、地域では、かつて大師栗の
生えている山に二年に一度火をかけて、大師栗の株ごと野焼きをしていま
した。普通の栽培栗なら枝を焼かれたら数年は実を着けないのですが、大
師栗は焼いた方が良く実を稔らせたそうです。これは生理学的にも大変お
もしろい現象で、大師栗の特性として栽培にも応用可能ですので、今、く
わしく調べています。


大師栗

黒潮町で地元のみなさんと交流する学生たち
大学院になると、学生はもう研究者の“卵”。
同じ研究者の先輩・後輩という意識で、学生の個性や自律性を尊重して指導しています!
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