高知大学 農林海洋科学部 大学院 総合人間自然科学研究科農林海洋科学専攻

ものべキャンパスのお話

学部卒論研究

栽培環境づくりで収量を最大に環境負荷やコストは最小に

船岡  高史さん

 植物の生産現場では、様々な要因によって農作物の収量が制限されています。作物の収量ポテンシャルを100とすると、実際の収量はなんと20ぐらいしかないという報告があります。収量が制限される要因には「病気」「害虫」「環境」などがありますが、中でも一番影響が大きいのが「環境」です。この「環境」要因の中には「温度」「湿度」「塩分濃度」などといった様々な要素があり、最大の制限要素は「水ストレス(水が不足している状態)」であるといわれています。つまり、「水ストレス」は農業の現場で頻繁に起こりうる状況なのです。
 僕の卒業研究は、このような水ストレス環境において、植物がどういう養分の吸い方をしているのかを生体と環境の両面から計測することです。そして、その養分吸収を数式でルール化し、効率的で省資源な栽培方法を探ることです。


実験は失敗の連続。それでもあきらめず植物を栽培し、
計測する毎日

循環型水耕栽培システムによる栽培の様子

 研究に用いたのは、キュウリ。温室内の循環型養液栽培システムで、水ストレスがかかるものと、かからないもの、2 種類を用意しました。この場合の水ストレスとは、NaCl(塩)のことで、ふつうの培養液とそこにNaCL を加えたものとで比較して調べました。一回の栽培におよそ50 日~ 70 日、その間の植物の生長と根からの吸水速度を計測しました。その計測結果からそれぞれの条件における養分の吸収速度を計算したところ、養分吸収についての数式が水ストレス環境でも適用可能であることと,水ストレス環境では植物の養分吸収が抑制されることがわかりました。
 実験で大変だったのは、キュウリの培養液にNaCL を加えるという実験の前例がなく参考にできる文献が少なくて、与える濃度を決めるのにとても苦労したことです。実はそれで2、3 回栽培に失敗しました。濃度が濃すぎると枯れてしまうし、薄いと実験にならないんです。あと、計測機器の設定ミスで実験がダメになったこともありました。それはもう、落ち込みましたね。夏場は40 度を超えるハウスの中で、休みもなく、失敗の連続で本当にしんどい時もありましたが、最終的には結果を得られた、やり遂げられたことが大きな自信につながりました。


物部キャンパスの法則 ── 研究試料は物々交換?!

 実験期間中、当たり前ですがものすごくたくさんのキュウリが収穫されます。多い時では一週間に50本以上にもなり、本当にこの1年、毎日毎日ひたすらキュウリを食べていました(笑)。僕は日章寮に入っていたので寮のみんなにも分け、研究室でも分けていましたが、最後の方はもう誰も受け取ってくれませんでしたね(笑)。 他の研究室でも同じような感じで、海洋生物生産学コースの方では計測した後の魚がたくさん残ってしまいます。僕もタイなどを何度ももらって、刺身や鍋にしてめちゃくちゃおいしくいただきました。お返しにキュウリをあげようとしたら、「もういらん」って断られましたけど・・・(笑)。 他にもニラとかトマトとか、友だちの研究試料をもらったり、交換したり。そういう楽しさは物部ならではだと思いますね。

友達や先生の存在が支えになり、刺激になった4年間

 実験がうまくいかなかったり悩んだりした時、僕の場合は日章寮の仲間の存在がいい切り替えになってくれました。みんなで料理を作ったり鍋を囲んだりするのはとても楽しかったし、研究と寮生活とを切り離してメリハリをつけるよう意識していました。また夏には毎年、日章寮チームでよさこいにも参加しました。部活や実験の終わった夜の10 時くらいからみんなで集まって一ヶ月くらい練習をして、本番はコスプレなんかもしてすごく盛り上がるんです。よさこいは大学院に進学してからも研究と並行して楽しみたいと思っています。
 一方で、研究室では先生とのやりとりでハッパをかけられ、気持ちを高めていけました。先生はいつでも相談にのってくれますが、こちらが何も考えずに「どうしましょう?」と聞くと怒られます(笑)。まずは自分の考えを出さないといけない。だから「こう考えているが、どうですか?」ならOK なんです。研究室では他の人の研究も互いにテーマをしっかり理解して助け合うという方針があったので、自分の研究だけでなく広く学ぶことができたし、コミュニケーションの大切さも教わりましたね。 実は、僕には大きな最終目標があります。それは、自分が作った養分吸収についての数式を実際の栽培現場に組み込み、効率的で環境負荷の少ない栽培技術を確立するという目標です。まだまだ"夢" の段階ですが、一歩でも近づけるよう大学院でも研究をより深めていきたいと考えています。