◆自然科学系農学部門の井原賢准教授らの研究成果が「Scientific Reports」誌に掲載されました

2023年5月30日

 金沢大学の豊田賢治助教、本学自然科学系農学部門の井原賢准教授らの共同研究成果が、2023年5月4日付けで「Scientific Reports」誌に掲載されました。

 エビやカニなどの甲殻類は一般に生涯にわたり脱皮を繰り返し、それに伴い体サイズの増大や繁殖を行っています。しかし、ズワイガニの仲間は生涯で脱皮する回数が決まっており、オスは稚ガニから10~12回、メスは10回脱皮することで繁殖の主群となります。オスは最終脱皮をすると鉗脚(ハサミ脚)が肥大化し、行動が攻撃的になることが知られていますが、そのメカニズムの大部分は未解明でした。そこで本研究ではファルネセン酸メチル(methyl farnesoate: MF)というホルモン分子に着目し、最終脱皮前後のオスのズワイガニの血中MF濃度を比較したところ、最終脱皮後にMF濃度が増加することが分かりました。また、MFの生合成・分泌を制御している眼柄神経節の網羅的な遺伝子発現解析から、最終脱皮後のオスではMF分解酵素遺伝子などの発現が抑制されることで血中MF濃度が高くなっていることが示唆されました。さらに、甲殻類と近縁の昆虫類において行動様式の変容を促すといわれる生体アミン関連経路が最終脱皮後のオスで活性化されていました。この結果より、生体アミン類が最終脱皮後のオスが攻撃的になる行動変容に関わっている可能性が推察されました。

 これらの知見から、MFや生体アミン類はズワイガニのオスの生殖行動を制御していることが示唆されました。ズワイガニは日本国内のみならず世界的に重要な水産資源であり、その繁殖生態の理解は、資源管理を遂行する上で重要な知見であるだけではなく、効率的な増養殖技術の開発にも役立てられます。

 本成果を基に最終脱皮を人為的に制御できる技術が開発されれば、水産価値の高い最終脱皮後のオスの効率的な生産方法の確立に寄与できると考えられます。

 

ズワイガニ最終脱皮前後.jpg

 

【論文情報】

論文タイトル:Eyestalk transcriptome and methyl farnesoate titers provide insight into the physiological changes in the male snow crab, Chionoecetes opilio, after its terminal molt
      (眼柄トランスクリプトームとファルネセン酸メチルの定量から得たズワイガニの最終脱皮オスの生理学的な変化に関する知見)

著者:Kenji Toyota, Takeo Yamamoto, Tomoko Mori, Miyuki Mekuchi, Shinichi Miyagawa, Masaru Ihara, Shuji Shigenobu, Tsuyoshi Ohira.
  (豊田賢治、山本岳男、森友子、馬久地みゆき、宮川信一、井原賢、重信秀治、大平剛)

雑誌名:Scientific Reports

URL: https://www.nature.com/articles/s41598-023-34159-y

 

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