- どのような方が対象になるか?
現在初期第I相臨床試験が終了し、疾患別に条件を設定した第I/II相臨床試験を開始しました。対照疾患につきましては、「初期第T相臨床試験終了と第T/U相臨床試験開始のお知らせ」をご覧下さい。
- 問い合わせ先
WT1がんワクチン療法臨床試験事務局
高知大学医学部免疫学教室内
〒783-8505 高知県南国市岡豊町小蓮
TEL: 088-880-2318 FAX: 088-880-2320
E-mail : vaccine@kochi-u.ac.jp
- 試験を受けるため必要な条件
1)HLA遺伝子型検査
末梢血を1ml程度取り、遺伝子を検査します。
スポンジのついたスワブで、頬粘膜をぬぐうことでも検査できます。
検査結果は、1週間程度で出ます。
*遺伝子検査の結果、親子関係やある種の病気になりやすさ、などが推定できる可能性があります。このため、遺伝子検査の結果は、個人情報として厳重に管理されます。遺伝子検査自体も、事前にご本人の同意書をいただかなければ、行うことが出来ません。
本臨床試験は、HLA-A*0201、A*0206、A*2402のいずれかのHLA型をお持ちの方が試験治療を受けることができます。日本人の約8割の方が、該当します。
2)腫瘍組織の免疫染色
腫瘍組織にWT1腫瘍抗原が発現されているか、免疫染色をして、WT1蛋白質の発現の有無(腫瘍細胞内に、蛋白質として作られているか否か)を調べます。原発腫瘍でも、転移腫瘍でもかまいません。腫瘍組織は通常、過去に手術や生検をされた医療機関に保管されています。ご本人から許諾があれば、主治医または、その医療機関に現在おられる医師に連絡をして、組織の取り寄せが可能です。組織が高知大に届いてから1週間程度で判定できます。WT1が組織に発現されている場合は、治療適応があります。腫瘍の種類にもよりますが、固形悪性腫瘍の7、,8割でWT1の発現が見られます。
- 臨床試験の申し込み
現在は臨床試験の被験者募集を行っておりません。3月を目処に新規臨床試験を開始する予定です。準備ができ次第、お知らせします。
- 治療の実際
WT1がんワクチン外来において、毎週1回、免疫注射をします。WT1ペプチドと、免疫賦活剤として少量の百日咳ワクチンを混ぜ、4箇所に分けて、皮内注射をします。場所は通常、左右両側のリンパ節が多く存在する脇の下および鼠径部に近い皮膚です。頭頚部腫瘍の場合は、首の付け根および脇の下のリンパ節に近い皮膚に投与することもあります。
皮内注射は、ツベルクリン注射が一例ですが、表皮と皮下組織の間に細い針を入れ、ワクチンを皮膚が水ぶくれのように膨れるように注入します。ワクチンの注入に伴い、表皮が皮下組織から剥がれるので、少し痛みがあります。
ペプチドワクチンを開始したあと、3ヶ月間腫瘍の変化を追って、いったん治療効果の判定をします。その時点で治療効果がみられる、あるいは、免疫を続けることにより治療効果が出る可能性が否定できない場合、患者さまご本人が継続治療を希望されれば、試験事務局内のデータマネージメント委員会で相談をして治療を続けます。
治療効果が見えない場合、他の治療に切り替えた方が患者さまに有利であると判断される場合には、治療の期間にかかわらず、患者さまにとって、より有利な選択ができるよう、速やかに説明をいたします。
- ワクチン注射をしたあと、体内でどのようなことが起こるか?
皮内注射をすると、ワクチン液がしばらく表皮の近くに留まります。表皮には樹状細胞と呼ばれる、T細胞にペプチド抗原を提示する能力の高い細胞が、ぎっしり網目を作って存在します。投与したペプチドは、これら樹状細胞の細胞表面に生えているHLA分子の一部に結合します。また、ワクチンに含まれる百日咳菌の菌体成分は、樹状細胞が異物と認識して積極的に食べこみます。菌体成分を取り込むことで、樹状細胞は活性化し、ペプチドを表面に結合したまま、表皮を離れ、リンパ節にむかって移動をはじめます。リンパ節に到達した樹状細胞は、リンパ節にぎっしり詰まっているT細胞に、HLA分子に結合した腫瘍抗原ペプチドを提示します。
リンパ節に、腫瘍抗原ペプチドを認識するT細胞がいると、活性化し、細胞分裂をして増え、全身循環に出ます。活性化されたT細胞は、抗原刺激を受けてから、1週間から10日の間、腫瘍細胞を殺す殺傷能力を有します。