高知大学医学部附属病院

よくある質問と回答(Q&A)

Q1.
手術をしていないのでWT1免疫組織染色に必要な腫瘍組織がありません。
A1.
生検組織(針や、内視鏡で組織片を採取したもの)の残りでも、組織検査は可能です。ただ し、、腫瘍組織がまったくない場合には一般的には治療に適しているかどうかわからないた め、臨床試験の対象にはなりません。

Q2.
手術や放射線治療、化学療法などの標準治療の結果、現在は、腫瘍が消失しています。再発予防のためにワクチンを受けることはできますか?
A2.
一般的には、標的腫瘍(治療効果を判定するための計測可能な大きさの腫瘍)がある症例 を対象にしますが、術前の腫瘍の広がりの程度により、再発の可能性が高い場合などに、現在腫瘍が消失している症例についても治療を試し、再発率や、再発までの期間を調べるような臨床試験も検討しています。また、前立腺がんにおけるPSAのように、特異性の高い腫瘍マーカーがあり、病気の動態が追える場合には、目に見える標的腫瘍がない症例についても、今後、試験治療を行う可能性があります。

Q3.
現在、抗がん剤の治療を受けていますが、がんワクチン療法を併用できますか?
A3.
抗がん剤は、一般にT細胞の分裂増殖を阻害するため、免疫療法の効果が減弱すること が予想されます。ただし、抗がん剤治療の休止期間など、うまく組み合わせて免疫治療を試すことが可能である場合もあります。
主治医の先生とご相談して、総合的に判断させていただきます。今後、抗がん剤と併用で、がんワクチン療法の効果を調べる臨床試験を新たに開始する可能性はあります。新たな臨床試験を始める場合は、このホームページでお知らせします。

Q4.
免疫の効果は、どれくらいの期間に現れますか?
A4.
目にみえる治療効果が現れるかどうかは、その患者さんの体内に、腫瘍ペプチド特異的T細胞が何個くらいあるか、によります。免疫をしていない健常者では、一般に、特定の腫瘍抗原ペプチドを認識するT細胞は、全T細胞中、百万個に1個くらいの割合でしか存在しません。免疫をすると、腫瘍ペプチド特異的T細胞が1回につき、十倍以上に増えます。担がん患者さんの体内では、自然に腫瘍抗原に対するT細胞が増えている傾向がありますが、それでも、目に見える腫瘍抑制効果が表れるためには、通常2,3ヶ月かかる場合が多いです。まれに、第1回目の注射の後から腫瘍部の発赤が起こったり、腫瘍の成長が止まったりする症例も観察していますが、通常は、治療効果が現われる症例でも、2,3ヶ月かかります。ただし、いったん治療効果が現れた症例では、腫瘍抑制効果が半年、1年と、長期にわたって維持されることが、しばしば観察されています。

Q5.
免疫効果のみられるヒトとそうでないヒトでは、どこが違うのでしょう?
A5.
我々もそれが知りたくて研究を続けています。考えられる要因のいくつかを以下に記します。
  1. 腫瘍細胞に発現されている腫瘍抗原の量が少ない。
  2. 腫瘍細胞の表面に、HLA分子に結合した腫瘍ペプチドが十分量、出ていない。
    HLA分子を作れない腫瘍細胞や、HLA分子にペプチドが結合する反応が起きにくい変異を持った腫瘍細胞が見つかっています。
  3. その患者さんの体内に腫瘍ペプチドを認識するT細胞が、ほとんどなかった。
    それぞれのヒトが持っているT細胞の種類は、過去の感染症や病気の歴史に 影響されるため、遺伝背景が似た家族の間でも、それぞれが持っているT細胞の種類は違います。
  4. 腫瘍抗原とはいえ、自己の体内に生じた腫瘍抗原に対しては、通常、免疫が起こりにくい仕組みがあるため、攻撃的に働くT細胞は誘導しにくい。
  5. T細胞が増える速度よりも速く腫瘍細胞が増殖する、あるいは、膨大な量の腫瘍を処理するには、T細胞の数が追いつかない。

Q6.
免疫注射は、どれくらい続ける必要がありますか。
A6.
現在までの治療成績をみると、治療効果が見られる症例においても、ゆっくり育つ腫瘍において、それまで成長していた腫瘍の成長が鈍る、停止する、新たな遠隔転移が出現しなくなる、という程度の腫瘍抑制効果に留まっております。積極的に腫瘍が縮小するまでの効果は得られていません。腫瘍の成長が止まっている症例で治療を休止したところ、再び腫瘍が成長をはじめることが経験されたため、現在は、ご本人から治療継続のご希望があり、主治医とも検討して臨床的に妥当と考えられる場合は、ペプチド免疫療法を継続しています。なお、現在手術などで腫瘍がなく、再発予防目的でワクチン療法を試している場合には、3〜6ヶ月程度免疫療法をし、いったん休止して様子をみる、腫瘍が再発した場合には、急遽、免疫療法を再開する、というやり方も、ひとつの選択肢と考えています。

Q7.
肺や骨などに多数の遠隔転移が見つかっています。がんワクチン療法を受けることは可能でしょうか。
A7.
腫瘍の全体量が少ない方が、治療効果が目に見えて現れる可能性が高いですが、ゆっくり 成長する腫瘍では、多数の腫瘍があっても、成長抑制が見られた症例を経験しています。T細胞は、全身を循環して腫瘍細胞の監視をするので、遠隔転移が複数あること自体は、免疫療法の障害にはなりません。

Q8.
以前は効果のあった抗がん剤も効かなくなってきました。このような腫瘍でも免疫療法で治療効果は期待できるでしょうか?
A8.
免疫療法の作用機序と、抗がん剤の作用機序は異なりますので、抗がん剤が効かなくなった腫瘍でも免疫療法の効果がある可能性はあります。ただし、長期の抗がん剤使用により骨髄の造血機能が低下している症例においては、血液細胞のひとつであるT細胞の反応性も弱いことが予想されます。

Q9.
前立腺がんで、現在、ホルモン療法により腫瘍が縮小傾向にあります。治療効果を高める ため、ホルモン療法と併用してがんワクチン療法を受けることはできませんか?
A9.
本試験は、ペプチドワクチン療法の治療効果を調べることを目的としています。現在、ホル モン治療等の有効な標準治療が有効で、腫瘍抑制効果が見えている場合には、重ねて投与したペプチドワクチンによる腫瘍抑制効果を区別して評価することが困難であるため、標準治療が現在有効である患者さまは、ペプチドワクチン療法の試験治療は受けられません。

Q10.
遠隔地に住んでいるため、ワクチンを送ってもらい、近医で免疫注射をしてもらうことはで きませんか?
A10.
ペプチドワクチンは、試験中の薬です。現時点では、本臨床研究に参加している施設以外 で投与することは許されていません。今後、試験が進み、厚労省から医薬品として認可されれば、一般の医療施設で投与が可能になります。

Q11.
標準治療で治療効果が得られないため、現在の主治医から、緩和ケアの病院あるいはホスピスへの転院を勧められています。それらの病院へ転院したあとも、がんワクチン外来に通って免疫療法を続けることはできますか?
A11.
残念ながら、現在の保険医療制度では、緩和ケア病棟で治療を受けられている患者さま が、がんワクチン外来を受診されると、医療保険が2重になり、社会保険上無理が出ます。

Q12.
所用や旅行で免疫注射を受けられない週が出た場合はどうなりますか?
A12.
治療効果の判定は、まず、治療開始後、3ヶ月後に行います。この期間は正しい臨床研究 の評価のために必要ですので、極力、毎週1回の投与計画に従って、治療を受けてください。もちろんがんワクチンの投与後継続困難な理由が出てくる場合(急速な進行、副作用などの有害事象)はこの限りではありません。
実際は、免疫注射を1、2回休んでも、腫瘍抗原を認識するT細胞の数が急に減ることはありませんが、腫瘍細胞を殺すのに必要な細胞傷害性物質は、T細胞が抗原刺激を受けてから、1週間から10日くらいで自然に分解されて殺傷能が低下します。再度、免疫を開始すると、T細胞は、新たに細胞傷害性物質を合成して、腫瘍細胞を殺す能力を再度、獲得します。
長期にわたって継続治療をする場合には、注射の間隔は、5〜10日程度の間で融通が利き、1、2回、免疫を休むことによって急激にT細胞が減ることはないので、日常生活も充実させながら治療を続けるのが適当であると思います。

Q13.
ワクチン注射の夜は、お風呂に入ってもかまいませんか?
A13.
注射は細いインシュリンの自己注射用の針で行いますので、傷は速やかに閉じます。刺し 跡が閉じれば、入浴も問題ありません。注射の夜から2日目にかけて軽い倦怠感があり、注射部位に発赤と熱感が生じることが一般的ですが、発赤の程度が5cmに達するような場合、皮膚が硬く腫れる、痛みが強く出る、倦怠感が強い、呼吸困難を感じる、というような場合は、ご連絡ください。

Q14.
ワクチン注射を受けたあと、ワクチン注射の場所とは違った場所に、発赤や痛みが出ます。
A14.
腫瘍抗原を認識するT細胞がワクチン注射により活性化されて、全身を回り、腫瘍部位に 侵入して発赤や違和感、痛みを起こさせることがあります。転移部位に決まって発赤が出る、という症例も経験しています。治療効果を観察する上で、重要な所見である可能性がありますので、外来受診の際に、ご報告ください。

Q15.
ワクチンの投与部に軟膏を塗ってもかまいませんか?
A15.
投与部に強い痛みや痒みが出る症例は経験しておりませんが、万一、投与部に軟膏を塗 る場合、抗ヒスタミン剤入りの軟膏や、非ステロイド系の消炎症剤は塗ってもかまいませんが、副腎皮質ステロイドを含む軟膏は避けてください。

Q16.
年齢は厳守ですか。
A16.
臨床試験は、大学の複数の委員会の審査を経て認められた計画書に基づいて行います。 定められた年齢を逸脱する方は参加できません。なお、年齢は、登録の時点での年齢であり、継続症例については、この限りではありません。

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