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コラム -医療情報提供-

妊娠と薬について

 妊娠中に薬の使用が可能かどうか不安に思う方も多いと思います。1960年代にサリドマイド薬によってあざらし肢症の児が生まれ、それ以後、薬害を心配し必要な薬物治療が控えられる問題や、薬を使用しているだけで妊娠を諦めてしまう事例もあり、妊娠中薬を飲んではダメと思ってしまう方もいるようです。「妊娠と薬」で最初にご理解いただきたいこととして、ベースラインリスクがあります。病気もなく薬を飲んでいない健康な両親でも、3%の赤ちゃんは何らかの異常を持って生まれることがわかっています。先天異常のある薬はベースラインリスクを上回る頻度で胎児に異常が生じる事になります。
 先天異常は、原因不明が50~60%ほどで、ついで遺伝的素因、環境因子などがあり、薬が原因とされるのは1%といわれています。妊娠初期4週~7週末の期間は胎児の中枢神経、心臓など重要な臓器などが形成される時期で、胎児は薬の影響を最も受けやすい過敏な時期です。妊娠8週~15週末は薬への感受性は低下する時期ですが、外性器への影響の報告がある薬の服用は注意が必要です。ちなみに、妊娠3週末までは、一部例外の薬はありますが、薬を飲んでも妊娠が確認されていれば先天異常を起こすことはありません。妊娠16週以降中期~妊娠末期の薬の影響は胎児の機能障害や胎児への毒性を考慮する必要のある時期です。薬が先天異常の原因となることは少ないと説明しましたが、妊娠の時期によっては先天異常を起こすことがわかっている薬が少数ですが存在します。妊娠初期は、ワルファリンやメトトレキサート、抗てんかん薬、大量のビタミンAなどが確認されています。妊娠中期~末期の代表的な薬は、アンギオテンシン変換酵素阻害薬やアンギオテンシン受容体拮抗薬といわれる降圧薬や非ステロイド性抗炎症薬(痛みや炎症を抑える薬)があります。これらは羊水が少なくなり新生児腎不全を起こす可能性、胎児の動脈管収縮を起こし肺高血圧や右心不全が起こる可能性があるとされています。
 当院では「妊娠と薬情報センター」の拠点病院として相談を受けています。妊娠中のお薬服用について不安や悩みのある方は、妊娠と薬情報センターのHPから相談方法をご覧下さい。お母さんが薬を使用することによる赤ちゃんの先天異常の可能性については情報がない場合も多く、判断は容易ではありません。妊娠後だけでなく妊娠前から、薬の服用は医師、薬剤師に相談の上、十分な理解のもとでの服用をお勧めします。


◎ 著者プロフィール
氏名:森田 靖代(モリタ ヤスヨ)
所属:高知大学医学部薬剤部 
役職:副部長

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