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コラム -医療情報提供-

光線医療について

 「光線医療」は光線を用いて病巣の診断・治療を行う医療技術のことです。広義には、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、X線、中性子線などの放射線も含まれますが、一般的に「光線医療」という場合は可視光近辺の波長を用いた医療技術のことを指します。可視光を診断や治療に用いる最大の利点としては、副作用が小さく低侵襲であることが挙げられます。高知大学医学部に附属する光線医療センターは、光線医療に関する診療・研究・教育を担う部門です。光線医療センターには、診療科を横断した様々な専門医が所属しています。高知大学医学部から生まれた、まさに高知ブランドの研究開発事業を世界に向けて発信してきました。
 それでは具体的に3つの光線医療技術に関して説明します。

1. 5-アミノレブリン酸を用いた診断・治療
5-アミノレブリン酸(ALA)はアミノ酸の一種であり、我々の全身の細胞内でも合成されている天然のアミノ酸です。腫瘍細胞ではヘムの前段階であるプロトポルフィリンIX(PpIX)の段階で代謝が渋滞を起こし、腫瘍細胞内にPpIXの蓄積が生じます。このPpIXに青色の光(405 nm)を照射すると、赤い蛍光(635 nm)を生じたり、細胞毒性がある活性酸素を生じたりします。PpIXの蓄積は正常細胞では認められず、腫瘍細胞でのみ認められる性質を利用して、赤い蛍光を術中の癌の診断に応用しております。また、活性酸素の発生による癌の治療も期待されており、海外の数カ国ではすでに保険の適用が認められており、日本でも逸早い承認が望まれています。

2. インドシアニングリーンを用いた診断・治療
インドシアニングリーン(ICG)は、それ自体が蛍光性を有します。780 nmの近赤外光の照射によって、830 nmの近赤外光の蛍光が確認されます。専用のカメラを用いると明確にICGの蛍光を捉えることができます。生体組織の透過性が良い近赤外光を用いることができるため、血管やリンパ管の走行状態を確認する手段として優れています。血管走行は外科手術時に切除前後や新規に増設した血管の血流の評価、リンパ管走行は癌の転移先の予測に用いることができます。

3. 狭帯域光観察
腫瘍組織は正常組織よりも栄養を多く要求するため、血管量が多く、なおかつ独特な走行をすることが知られています。そのため、血管の状態を確認することで腫瘍組織を特定することが可能となります。狭帯域光観察(NBI)は、緑色の狭帯域光(530-550nm)および青色の狭帯域光(390-445nm)を用いて、血管中のヘモグロビンを検出する診断方法です。NBIはALAやICGと言った薬剤を投与する必要がないため、被験者の負担が少ない特長があります。

 歴史的に光線医療技術は特にがん治療に多く応用されてきました。さらなる技術の発展がより低侵襲かつ再発率の少ない医療技術の確立へと繋がります。高知大学の光線医療センターは診療・研究・教育を通じて、目標の達成に向けて邁進いたします。


◎ 著者プロフィール
氏名:中山 沢(ナカヤマ タク)
所属:高知大学医学部附属光線医療センター 
役職:特任助教 

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