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コラム -医療情報提供-

老化と口の健康

 年齢とともに、足腰の筋肉の衰えを自覚している方も多いと思いますが、口や喉の筋肉も老化により衰えていくため、食事中に食べ物やお茶が口からこぼれたり、むせたり咳き込んだり、食べ物が喉につまりそうになる摂食嚥下障害の症状が出てきます。今回は、口から食べる摂食運動が問題なくできているか確認していきます。
 まず、口を大きく開けた時、自分の手指が縦に3、4本入れば問題ありませんが、1、2本しか入らない方は食べ物の形態を小さくするといった工夫が必要です。開口時に顎の関節に痛みやひっかかりがある方は専門医を受診して頂きたいですが、開口する筋肉が衰えている方は朝晩1回ずつ口をできるだけ大きく開けて10秒間そのままキープする開口訓練を5回繰り返しましょう。
 最近、食事中頻繁に食べ物や水分が口からこぼれる方は口輪筋という唇の周りの筋肉が衰えているかもしれません。空のペットボトルを唇だけで10秒間くわえることができない方は、風船をふくらます、息を全部ゆっくり吐き出した後に空のペットボトルを口にくわえ、ペットボトルがくしゃっとへこむ状態にまで思い切り息を吸い込んだ後、ペットボトルが元の形になる状態になるまで息を吐きだすといったトレーニングで口輪筋を鍛えましょう。
 次に、残存歯が20本より少なく上下の奥歯で噛むところがないと、刺身などの弾力のある固い食べ物をしっかり噛み砕くことができません。そうすると食べ物を塊の状態で無理やり丸呑みすることになり、丸呑みした食べ物が喉に引っかかって窒息を起こすリスクが高くなりますので、義歯を使いましょう。残存歯が少なく義歯を使っていない場合、認知症の発症や転倒による骨折のリスクが上がることも報告されています。
 また、食べ物を奥歯で噛み砕く際、舌と頬の筋肉がバランスよく収縮して食べ物を奥歯が噛み合う面に移動させています。舌や頬の筋肉が衰えると食事中にほっぺたや舌を噛みやすくなります。さらに、舌の筋肉が衰えると、食べ物を飲み込んだ後も口の中に食べ物が残り、飲み込むまでに時間もかかります。頬の筋肉は、ほっぺたをふくらましたりへこましたりする体操、舌は口を閉じた状態で歯の表側をぐるりと舌でさわっていく舌回し運動などで鍛えましょう。
 コロナ禍で家で過ごす時間が増えていますが、口のトレーニングはテレビを見ながらでも気軽にできます。一生涯自分の口から美味しく食事ができるよう、お口の健康づくりに取り組みましょう。


◎ 著者プロフィール
氏名:笹部 衣里(ササベ エリ)
所属:高知大学医学部附属病院 歯科口腔外科 
役職:講師 

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