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コラム -医療情報提供-

アトピー性皮膚炎を注射で治す新しい治療

 アトピー性皮膚炎の患者さんは何年も、かゆみのある湿疹を体じゅうに繰り返します。その病態は①刺激に弱い乾燥肌、②かゆみ神経の過敏、③皮膚に触れるアレルゲンへの過剰なアレルギー反応という、3つの要素が影響しあっています。皮膚がかゆくて掻く→湿疹が悪化してかゆくなる…、と繰り返す悪循環があり、そこから抜け出すための治療をします。
 アトピー性皮膚炎の治療で最も大切なのは塗り薬で、炎症を止めるステロイド外用剤、乾燥肌を補う保湿剤、落ち着いた時期に使う免疫抑制剤の外用剤があります。ステロイド外用剤には副作用(皮膚が薄くなる、赤ら顔になるなど)もあり、効果と副作用を正しく理解して使います。湿疹がひどい時には薬を毎日たっぷり塗り、良くなったときに急にやめず、塗る間隔を数日おきへと少しずつ開けていくのがコツです。落ち着いたら、塗り心地のよい薬へ変更するなど、なるべく塗り続けやすいよう配慮しています。
 塗り薬で効果不十分なときには、従来は紫外線治療や免疫抑制剤の飲み薬を併用していました。そこへ2018年に、注射の新薬(薬剤名=デュピクセント)ができました。この薬は、アトピー性皮膚炎におけるアレルギーの主要なシグナルであるインターロイキン4・13の伝達を止めます。この治療で湿疹が起きにくくなるほか、乾燥肌もかゆみも改善します。重篤な副作用もほぼなく、投与した方の2〜3割に結膜炎(花粉症のように目が充血し、かゆくなる)が生じますが、点眼薬で治療できます。
 デュピクセントは2週間ごとに皮下注射する薬ですが、仕事や学校で毎回受診できない方も多いです。その場合、病院で何度か練習をして、ご自宅で2週間ごとにご自身で注射することもできます。なお、薬剤費が高価なため、高額療養費制度や医療費控除などを利用して医療費を軽減します。
 慢性疾患であるアトピー性皮膚炎の治療目標は、「夜かゆくならず、よく眠れる」「勉強や仕事に集中できる」など、日常生活に困らない状態を保つことです。デュピクセントによって、この目標がかなり身近になりました。治療を受けている方々からも「高価な薬だけあって、想像以上に効いてびっくりしている。ぜひ他の患者さんにも教えたい」と好評です。
 さらに2020年以降、他にもアトピー性皮膚炎の新しい外用剤・内服薬が増えており、治療方法が大きく変わってきています。気になる方はぜひお近くの皮膚科医へご相談ください。


◎ 著者プロフィール
氏名:青木 奈津子(アオキ ナツコ)
所属:高知大学医学部附属病院 皮膚科
役職:助教 

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