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コラム -医療情報提供-

がん検診とHPVワクチン

 子宮頸がんは、ほとんどがHPV(ヒトパピローマウィルス)によって引き起こされることが知られています。日本では年間約1万人が罹患、約2,800 人が死亡し、患者数・死亡者数とも近年漸増傾向にあるがんです。当院ではここ数年は年間約30例程度の子宮頸がんに対する診療を行っています。手術ができないような進行子宮頸がんは10例を超えます。
 がんが発生するためには色々な原因がありますが、子宮頸がんの場合は99%がHPVによるものと言われています。性交渉によってHPVが子宮頸部の細胞に感染し数年~十数年かけて前癌病変を経て進行癌に至ります。
 日本人のがん検診受診率は先進国の中では非常に低く35-40%程度です。また、子宮頸がんは若くてもなることがあります。妊娠出産が望めなくなる可能性があるため、20歳を超えたらがん検診を受けることをお勧めします。
 HPVワクチンは、2006年に欧米で生まれ、使われ始めました。世界保健機関(WHO)が接種を推奨しており、現在では100カ国以上で公的な予防接種が行われています。
 イギリス、オーストラリアでは接種率は約8割です。
 日本では、2009年12月にワクチンとして承認され、2013年にHPVワクチンが定期接種として行われましたが、慢性の痛みや運動機能障害など「多様な症状」のため、積極的勧奨が中止されました。HPVワクチンとの因果関係を示す根拠は報告されていませんが、残念ながらその時のイメージが強く、現在も積極的勧奨は中断されています。
 他のワクチンと同様にHPVワクチンは定期接種として、公費助成によって接種できますが、日本人のワクチン接種率は0.2%と非常に低くなっています。
 がんの中で、ワクチンで予防できるがんはそれほど多くありません。ワクチンの接種率が向上すれば進行癌がほとんどなくなることは分かっていて、ワクチンを接種していなくても、検診を定期的に受けていれば進行がんは防げます。
 現在年間30人前後は進行子宮頸がんの治療のため当院を受診されます。その中には若い方もいて、妊娠出産をまだされていない方や、まだ小さいお子さんがいる方もいます。がんは時に命を奪うこともある怖い病気です。婦人科の受診は抵抗があると思いますが、「症状がないから大丈夫」なんてことはありません。今は二人に一人が一生のうちにがんになる時代です。中には予防できないがんもたくさんありますが、子宮頸がんは予防できるがんです。この機会に婦人科検診を受けられていない方は受けてみてはいかがでしょうか。また、お子さんのいる方はHPVワクチンを検討してみてください。


◎ 著者プロフィール
氏名:氏原 悠介(ウジハラ ユウスケ)
所属:高知大学医学部附属病院 産科婦人科 
役職:助教 

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