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コラム -医療情報提供-

災害時の妊産婦の避難生活について

 妊娠中の女性の体は大きく変化します。一つに血が固まりやすい特徴があります。これは分娩時の止血のためですが、一方で血液の粘度を上昇させ静脈血栓ができやすくなります。災害に伴う避難生活では、食料や水分の不足による脱水や狭い空間での生活で活動範囲が狭くなるため、静脈血栓ができやすくなります。その血栓が肺の血管を詰まらせる肺塞栓血栓症、いわゆるエコノミークラス症候群は発症すれば極めて重篤で、無治療では18~30%が死亡するため、避難した妊婦はこまめな飲水摂取と定期的に体を動かすことが大切となります。
 また、妊産婦は、ホルモンの変化、緊張、疲労、心身のストレス、妊娠、胎児に対する不安や出産後の将来に不安を抱きやすく、気分が落ち込み「うつ状態」になることがあり、睡眠障害、拒食・過食、集中力・思考力の低下、異常に疲れやすいなどの症状が出てきます。そのため、静かな環境で十分に休息をとり、規則正しい食生活のを励行が必要です。また避難生活を強いられると、育児を続けていく中で、育児不安、育児による慢性的な疲労、授乳のトラブルなどに不安が強くなることが想定されます。
 各市町村には、妊産婦や高齢者、障害があるなど配慮が必要な方が優先的に避難できる「福祉避難所」の整備が進められています。そこでは、配慮の必要な方の特性を踏まえ、避難生活に必要な空間を確保しています。また、一般的な避難所でもコロナウィルス感染予防の観点から、以前よりもスペースが確保され、プライバシーを保って避難生活がおくれるできるように、整備されてきています。さらに、一般的な避難所の中で、配慮が必要な方が優先的に使用できるスペースが確保できている避難所も増えてきました。このような状況ですので、お住いの近くの避難所がどのような取り組みがされているのかを調べ、ご家族と避難生活が必要な場合について、話し合いをすることをおススメします。
 また、発災後はなかなか病院に行けなかったり、かかりつけの産婦人科に通うことができないことも想定されます。高知県では災害時はかかりつけの産婦人科でなくとも、最寄りの産婦人科を受診することができるように県全体で取り組んでいます。災害時はお近くの産婦人科を受診できますので安心してください。


◎ 著者プロフィール
氏名:渡邊 理史(ワタナベ タカフミ)
所属:高知大学医学部附属病院 産科婦人科 
役職:助教 

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