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コラム -医療情報提供-

がん治療に際し、なぜ口腔ケアが重要か?

 がんは日本人の死因第1位の病気で、2人に1人はがんになると言われていますが、不治の病ではなく、適切な治療により治癒・寛解が望め、社会復帰ができる方も多数いらっしゃいます。しかし同時に副作用は避けて通れず、辛すぎると、治療をやり遂げることが難しくなります。この副作用にも目を向け、それを適切にコントロールしながら良い治療効果を得ることが大切です。
 アメリカの国立がんセンターは、抗がん剤治療を受ける患者さんの約40%、造血幹細胞移植治療のような強い抗がん剤治療を受ける患者さんの約80%に口に関連する副作用が現れると報告しています。
 その代表的なものは「口内炎」で、ほとんどの抗がん剤治療で起こります。開始から1週間から10日くらいで起こり、自然に治っていくのですが、全身状態が悪かったり、口腔内の清掃状態が悪く細菌の数が多いと、なかなか治癒しなかったり、口内炎の傷から全身感染症を来たし重症になることがあります。そうなると治療を休んだり、量を減らしたり、スケジュールの変更など、がん治療に悪影響を及ぼしてしまいます。
 また、ほとんどの抗がん剤治療中は「骨髄抑制」という白血球の数が減り抵抗力が低下するといった副作用が起こります。むし歯や歯周病が治療されていない状態で抗がん剤治療が始まってしまうと、それまで症状のなかった歯が痛みや腫れの原因となることがあります。また細菌に限らず、カンジダに代表される真菌感染症やヘルペスなどのウイルス感染症も起こりやすくなります。
 さらに、がんが骨に転移した時に、骨を強く硬くする薬剤(骨吸収抑制剤)を使用することがあります。この副作用として、顎骨壊死(顎の骨が腐る)が起こることがあります。これは治らないことが多いため、予防が大切です。顎骨壊死は口腔内の清掃状態が悪いと起きやすく、また歯を抜いた後の傷から起きることが多いですから、投与を受ける前には必ず歯科を受診し、問題のある歯はあらかじめ抜くなり治すなりしておくこと、清掃指導を受けておくこと、投与中・後も定期的に歯科受診をし、異常がないかどうかのチェックや口腔ケアを継続して受けることが大切です。
 また、抗がん剤だけでなく、手術を受ける前にも口腔ケアは大切です。特に、口や喉、食道のがんなどでは、手術前に口腔ケアを受け細菌数を減らしておくことによって、手術後の感染症や肺炎などの重篤な合併症を減らすことができるということが証明されています。

 是非、がん治療開始前には歯科を受診してください。もっと言えば、がんになってからではなく、日頃からかかりつけ歯科を持ち、定期的な口腔ケアを受けておいてください。がん治療に際して、口腔ケアは非常に重要なのです。


◎ 著者プロフィール
氏名:仙頭 慎哉(セントウ シンヤ)
所属:高知大学医学部附属病院 歯科口腔外科
役職:助教

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