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コラム -医療情報提供-

輸血に関する新しい話題 〜新しい輸血の話〜 iPS細胞による輸血の未来

[輸血に関する現在の課題]
 現代医療では、輸血による治療が欠かせません。内科・外科を問わず、輸血で初めて命が救えることも多いのです。
 輸血のための血液製剤は、日本では全て献血により血液センターで作られています。ところが、近年の少子高齢化により献血可能な人たちの数が減っており、輸血用血液が不足する事態が生じています。さらにこの2年間は新型コロナウイルスの影響で献血会場に集まる人が減少し、血液不足に拍車をかけています。今後他の病原体のパンデミックが起こる可能性もあり、現状の献血だけでは将来血液が確保できなくなる恐れがあります。
 人工的に輸血に必要な細胞の代用になる物を作る研究も長年続けられていますが、まだ実用化されていません。そこで輸血用血液細胞(「赤血球」や「血小板」)を確保するため、近年大きな話題となっている「iPS細胞」を用いる方法が検討されています。

[iPS細胞について]
 iPS細胞とは、京都大学の山中伸弥先生が2006年に作成に成功した「多能性幹細胞」です。多能性幹細胞とは、多くの組織・器官に「分化」(細胞が成熟し機能や形態が変化)する事のできる画期的な細胞です。皮膚の細胞などからiPS細胞を作る事に成功し、山中先生は2012年のノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

[iPS細胞で輸血用血液細胞を作る(血液細胞プール)]
 そのiPS細胞から輸血用血液細胞を作ることで、輸血用血液の不足を解決することが期待できます。京都大学グループから、患者さん自分自身のiPS細胞から血小板を作成し輸血したところ有効だったとの報告があります。しかしiPS細胞を作るのに数ヶ月、そこから血液細胞を作るのにもまた数ヶ月かかるので、手術や怪我などに対する輸血には間に合いません。
 そこで考えられたのが、多くの人に適合するタイプのiPS細胞から定期的にいろいろな血液型の「赤血球」や「血小板」を作り、血液センターのような供給施設にストックしておく方法です(「血液細胞プール」と呼びます)。輸血が必要になったら、その血液細胞プールから患者さんに最も適合した血液細胞がすぐに届けられます。
 血液細胞の生産技術も確立されつつあり、血液細胞プールの実用化に向けて着実に進んでいます。この血液供給システムが実現すれば、輸血用血液の不足を根本的に解決できるものと考えられます。私も早期の実現に大いに期待しています。
 iPS細胞による新しい輸血により命が救われる未来が近づいています。


◎ 著者プロフィール
氏名:今村 潤(イマムラ ジュン)
所属:高知大学医学部附属病院 輸血・細胞治療部
役職:副部長

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