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コラム -医療情報提供-

認知症の家族を介護する人のセルフケア

 今回は、家庭で認知症の家族と生活をともにする方々にとって苦労と困難さをどう乗り超えて生活を共にするかについてお話ししたいと思います。

Ⅰ. 介護が家族の健康と幸福に及ぼす影響
 研究では、66〜96歳の介護者は配偶者の介護に精神的または感情的なストレスを感じ、介護のない場合よりも63%も死亡率が高いことがわかっています。長期のストレス、介護の肉体的疲労など、重大な健康問題のリスクに加えて、自分自身の予防的医療やセルフケアを無視してしまう傾向が強く、睡眠不足や不規則な食生活、運動不足などのリスクにも曝されています。
 また、親の世話である場合では、愛情と献身を強いられる場合が多く、やりがいのある反面過剰な自己犠牲を払ってしまう可能性から、介護者は被介護者よりも慢性疾患にかかるリスクが高いのです。

Ⅱ. 認知症状ケアにおける心掛け
 まず、自分を健康に保つこと。
 私たちは最初に自分自身の身を守って初めて周りの人を効果的に助けることができます。自分の健康管理をすることは、介護者としてできる最も重要なことの1つであり、最も無視されがちなことの1つです。介護者が自分自身の健康を犠牲にすることなく介護をすることは、被介護者にとってもベストなことです。
<その1> 介護者自身の心の準備
 様々な認知症行動には、感情的にならず冷静に対応するべきです。最も大切なことは、介護者ができるだけ無理なく最善を尽くし、完璧を求めないことです。自分の気持ちに正直に、家族皆とその気持ちを分かち合って、まずは無理なくやれることをやってみてください。
<その2> 自分の体を健全に保つ
 ご自身のストレス軽減のための瞑想や運動を行い、適切な休息・睡眠と栄養を取り、カウンセリングや友達に気持ちを聞いてもらうなどのサポートを使いながらセルフケアを実践してください。
<その3> 前向きに考える
 介護者が感じるストレスは、介護状況の難しさだけではなく、コップ半分の水を「半分満たされている」と思うか「半分空である」と思うかの認識の結果でもあり、考え方を変えればストレスが少なくなる場合もあります。

Ⅲ. 「認知症サポーター制度」
 「認知症サポーター制度」は、2005年に厚生労働省の呼びかけでスタートしました。目的は、地域ぐるみで認知症患者とその家族を支援することで「認知症患者が安心して暮らせる街」を実現することにあります。その活動の一環として、「認知症サポーター」を養成しています。その役割は認知症を正しく理解し、認知症の人や家族を見守り、支援すること。患者の支援だけでなく、認知症の正しい知識を友人や家族に伝えたり、患者の世話をする家族の相談を聞いたりします。認知症サポーターの数は全国で900万人を越しその活動の輪はさらに広がりつつあります。社会全体で認知症を正しく知ろうという機運が高まっており、決して家庭内だけで悩まず、些細なことでも支援してくれる人たちがいることを覚えておきましょう。
<認知症カフェ>
 日本には4,300か所以上あり、1、情緒的サポートを提供し地域社会からの孤立を防ぐ認知症の人と介護者の心理的負担の軽減 2、適切なサービスや専門職と早期につながり、介護負担の軽減や適切な支援により地域や住宅生活の安定につなげる、ことを目的にしています。


◎ 著者プロフィール
氏名:佐野 潔(サノ キヨシ)
所属:高知大学医学部家庭医療学講座
役職:特任教授  

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