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コラム -医療情報提供-

身近な病気 糖尿病

 日本の糖尿病患者は、現在疑いのある人を含めると2000万人もいます。まさに国民病と言われるゆえんです。糖尿病では血液の中のブドウ糖が高い状態が続いているのですが、ほとんどの人がいたくもかゆくもありません。そのために、なかなか医療機関を受診してくれない、受診してもすぐ治ったと勘違いして受診をやめてしまうという問題があります。糖尿病を強く疑われる40歳代の人の約半数が医療機関を受診していません。
 糖尿病と診断する時には血液の中のブドウ糖濃度である血糖値と、1-2ヶ月の血糖値の平均をあらわすヘモグロビンA1cが大事です。健診などで、糖尿病の可能性があるもしくは糖尿病であると結果が返ってきた人は、すぐに医療機関を受診して下さい。
 では、糖尿病とはどういう病気なのでしょうか? ブドウ糖は体に欠かせないエネルギーのもとです。脳はブドウ糖をエネルギー源にして働いていますし、ブドウ糖を使うことで筋肉を動かすことが出来ます。では、そんな大事なエネルギー源が体の中にたくさんあってなぜ悪いのでしょうか?少しこまかい話をします。
 食べ物を食べると、それが消化され、吸収されます。ごはんやパンなどの炭水化物は消化され、ブドウ糖などの糖に分解され腸から吸収されます。吸収されたブドウ糖は、血液の流れに乗って体のすみずみまで行き、体中の細胞の中に取り込まれます。細胞に取り込まれたブドウ糖は、細胞が生きるためのエネルギーになります。
 ブドウ糖が細胞の中に取り込まれる時には、インスリンというホルモンが必要です。インスリンは膵臓という臓器から分泌されます。食事をしてブドウ糖が血液の中に増加すると、それに合わせて膵臓からインスリンが分泌されます。インスリンの作用により、血液の中のブドウ糖が細胞の中に取り込まれ、結果として、血糖値は下がります。
 では、糖尿病の人はどうなのでしょうか。糖尿病になると、血糖値に見合うだけのインスリンが分泌されない、もしくはインスリンは十分分泌されるのですが、それがうまく働かないことにより、血液中のブドウ糖は、血液の中から細胞に入ることができません。その結果、血液の中にブドウ糖がたくさん残ります。これが、血糖値が高いという状態です。
 細胞の中にエネルギーのもとであるブドウ糖が入りませんから、細胞はエネルギー不足になります。それに加えて、血液中に残った過剰のブドウ糖は、血管を傷つけてしまいます。
 つまり、糖尿病を小さな視点から見ると、体のエネルギーが不足していることと、血液中のブドウ糖が血管を傷つける病気、だと言えます。
 ブドウ糖が血管を傷つけると、何が起こるのでしょうか?血管は全身にあります。つまり、全身が傷ついていきます。それが糖尿病合併症と言われるものです。3大合併症といわれるのが、糖尿病神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病腎症です。進行すると失明したり、人工透析が必要になったり、足が腐って切り落とさなくてはいけなくなります。さらに、心筋梗塞や脳梗塞なども起こしてきます。
 血糖が高い状態が長く続くと、このような合併症が進みます。初めて病院に受診した時、目が見えなくなった、胸が苦しい、体半分が動かなくなったといったかなり状態の悪い人が少なくないのです。ですから、健診などで糖尿病と言われたら、必ず医療機関を受診するようにして下さい。
 私は外来患者や入院患者に、糖尿病という病気は体質だとお話しています。日本人は、欧米人と比較して、インスリンを出す力が弱いと言われています。欧米人はかなりの肥満にならないと糖尿病になりませんが、日本人は軽い肥満でも糖尿病になりえますし、痩せていても血のつながった人に糖尿病の人がいる人は糖尿病になる可能性があります。つまり、日本人は適切な食事、適切な運動をして健康な生活を送る必要がある体質だと思って下さい。
 糖尿病の治療の目標は、血糖値を適切にコントロールすることにより、合併症を予防し、健康な人と変わらない生活をおくる事です。そのために1年後、5年後、10年後を見据えて今治療を開始しなければいけません。適切な食事、適切な運動が治療の基本です。それでもなお血糖が十分に下がらない場合に初めて薬を補助的に使います。糖尿病は薬を飲んで治すわけではありません。生活習慣を見直し、健康的な生活をおくること、それが一番大事なことです。


◎ 著者プロフィール
氏名:船越 生吾(フナコシ ショウゴ)
所属:高知大学医学部附属病院 内科(内分泌代謝・腎臓)
役職:助教

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