microRNA (miRNA)は、相補的なmRNAの翻訳を抑制する機能性の小分子RNAである。miRNAは、細胞の発生、増殖、分化、アポトーシスに関与しており、様々な疾患との関連性も示唆されている。特に癌組織においては、多くのmiRNAの発現低下が確認されており、そのようなmiRNAは癌抑制因子として機能していると考えられている。 坂本博士は、二本鎖RNA結合蛋白質NF90 family-NF45が、結合親和性の高いpri-miRNA(miRNAの初期転写産物)に結合すると、プロセシング酵素Drosha-DGCR8の接近が邪魔されて、pri-miRNAのプロセッシングが抑制されることを見出した(Sakamoto et al. MCB 2009 in press)。 一方、NF90-NF45は分化度が低い細胞において発現が高いことが知られている。坂本博士は、肝細胞癌手術標本の癌部と非癌部におけるNF90-NF45の発現を比べた結果、癌部で発現が有意に高いことを見出した。逆に、NF90-NF45と結合親和性が高いlet-7(miRNAの代表種)の発現は癌部において低下していた。癌部におけるlet-7の低下は、let-7の標的である癌遺伝子Ras, c-Myc, HMGA2の発現を促し、腫瘍化を促進すると考えられ、NF90-NF45の発現増加がキーレギュレーターとなっている可能性が考えられる。
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