第8回 KSGCセミナーのご案内



    講師:仲山 賢一 先生 
   (産業技術総合研究所 生物プロセス研究部/健康工学研究部門)

演題:糖鎖の機能解析とその利用


日時:平成22年4月23日(金)17:00-18:00
場所:大学院棟1階セミナー室



我々は、糖鎖の機能を様々な手法で解明し、それを疾病の診断・治療に用いることを目的とし次の3テーマについて研究を行っている。
1)糖鎖-糖鎖インターラクションについては、糖脂質糖鎖同士のものが知られていたが、糖脂質糖鎖と糖タンパク質糖鎖のインターラクションについてはほとんど知られていなかった。一方、糖脂質GM3は増殖因子レセプターであるEGFRに結合し、EGFRの自己リン酸化を抑制することが知られていた。この結合について解析をした結果、EGFRとGM3の結合には、糖鎖の構造に依存した糖鎖同士の結合が大きく関与していることが明らかとなった。
2)糖脂質生合成酵素遺伝子の発現調節。ヴェロ毒素レセプターとして知られるGb3合成酵素遺伝子のゲノム上流-133〜-59bpにポジティブに発現を調節する領域が存在することが分かった。また、Gb3合成酵素の発現を調べてみたところ、HUVECにおいて、TNF-αにより発現が上昇していることが明らかとなった。このときの糖脂質の解析を行ったところ、増加した糖脂質はGb4であり、さらに脂肪酸の鎖長が長くなることが明らかとなった。この結果、脂肪酸鎖長が長くなったGb4は炎症マーカーとなる可能性が示された。
3)酵母を宿主とする糖鎖組換え技術(糖鎖工学)の開発。酵母のN-結合型糖鎖は小胞体までの生合成経路はほ乳類と同じであるが、ゴルジ体における修飾が異なる。このため、酵母型の糖転移酵素を破壊した株が作成されていたが、遺伝子破壊により生育が悪くなり、タンパク質生産能力が低くなることが問題となっていた。この問題を解決するために、不均衡変異導入法と言う変異導入法を用いて宿主株の改良を試みた結果、生育が回復しただけでなく、タンパク質の生産量も野生型株の10倍になったものを取得することに成功した。






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