アルツハイマー病は、脳実質にAβが蓄積することが原因で発症すると考えられている。一方で、実に9割近いアルツハイマー病患者で、脳血管壁にもAβが蓄積することが確認されている。Aβは、APPが2種類のプロテアーゼで切断されて生じる。脳実質に蓄積するAβは、主にニューロンに発現するAPP(APP695)から生じると考えられる一方で、脳血管壁に蓄積するAβの由来は不明のままであった。 私達は、脳血管内皮細胞はニューロンと異なるAPP(APP770)を発現し、Aβを産生することを明らかにした。さらに、APP770には、O型糖鎖が結合しているタイプと結合していないタイプが存在し、O型糖鎖を持つタイプだけがAβ産生経路をたどることも明らかにした。さらに、Aβの生成過程でAPP切断産物として生じ、血清やヒト脳脊髄液に分泌されるsAPPβも、ニューロン型(sAPP695β)と脳血管内皮細胞型(sAPP770β)が存在し、相互識別が可能であることも見いだした。 本セミナーでは、血管内皮細胞型APP770について、その性状と代謝産物の診断マーカーとしての可能性について発表したい。
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