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研究内容

HOME研究内容 > 新規炎症マーカー分子LRGの同定とその臨床応用

② 活動期リウマチ患者血清のプロテオミクス解析

我々はプロテオミクス解析の手法を用いて抗TNF-α抗体(レミケード)などの生物学的製剤による治療前、治療後の関節リウマチ患者血清蛋白質を比較し、治療前(活動期)で有意に上昇し、治療後(寛解期)に速やかに低下する蛋白質としてLeucine-rich alpha-2-glycoprotein (LRG)を同定した(Serada et al., Ann Rheum Dis, 2010)。LRGは主に肝臓で産生される血清蛋白質として知られていたが、我々の一連の解析の結果、IL-6、TNF-α、IL-22といった炎症性サイトカインによって発現が誘導される急性期蛋白質であり(Serada et al., Inflamm Bowel Dis, 2012)、また肝臓以外の様々な疾患の炎症部位(上皮やマクロファージ、好中球など)においても発現の上昇を認めた。これまでに関節リウマチ以外にも、潰瘍性大腸炎、クローン病、乾癬等において、血清LRGが疾患活動性マーカーとして有用性を発揮する事を明らかにしている(Serada et al., Inflamm Bowel Dis, 2012, Shinzaki et al., J Crohns Colitis, 2017, Nakajima et al., J Dermatol Sci. 2017)。以前から炎症マーカーとして使われていたC反応性蛋白質(CRP)は、IL-6依存的に肝臓で産生され、その他の炎症性サイトカインでは発現が誘導されないことから、LRGはより広範囲な疾患で炎症のマーカーとして使える可能性がある。実際、CRPが病勢をうまく反映しない潰瘍性大腸炎では、LRGの方が疾患活動性と有意に相関していることを明らかにした。さらに、関節リウマチ患者において、抗IL-6受容体抗体使用時はIL-6依存性のCRPの発現が抑制されるために、CRPを疾患活動性マーカーとして使うことが出来ないが、LRGは様々な炎症性サイトカインにより炎症局所で産生されるために、抗IL-6受容体抗体使用時の疾患活動性マーカーとしての有用性も示す(Fujimoto et al., Arthritis Rheumatol, 2015)。現在、企業と共同でLRGの測定系を開発しており、様々な疾患を対象にLRGの炎症マーカーとしての可能性を検証している。

我々はまた、LRGの機能面での検討も行なっている。LRGノックアウトマウスを独自に作製し、マウスにリウマチ様関節炎(CIA:collagen induced arthritis)を起こさせたところ、KOマウスでは関節炎が軽減された(Urushima et al., Arthritis Res Ther, 2017)。このことはLRGが炎症の増悪に何らかの形で関わっていることを示唆している。現在、様々な疾患マウスモデルを用いてLRGの機能面での解析を行い、創薬標的としてのLRGの評価を行っている。

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