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研究内容

HOME研究内容 > 癌細胞膜特異抗原の同定と抗体医薬開発(GPC1)

③-1 癌細胞表面分子のプロテオミクス解析と病態解明および創薬への応用

我々は難治性癌に高発現する細胞膜蛋白質の同定と抗体医薬開発を目的として、定量的プロテオミクス手法を用いて、正常食道上皮細胞と食道癌細胞株との細胞膜蛋白質の比較を行った。その結果、食道癌細胞株に有意に高く発現している細胞膜蛋白質としてGlypican-1(GPC1)を同定した(Hara et al., Br J Cancer, 2016)。食道癌手術組織を用いた詳細な解析の結果、GPC1はヒトの食道癌組織にて高発現していることやリンパ節など転移先の臓器にも発現が保持されること、GPC1の発現が高い程予後が悪いことを明らかにした。GPC1は、heparan sulphate proteoglycans(HSPGs)ファミリーの分子の1つであり、HB-EGFやFGF-2,HGFといったheparin-binding growth factors(HBGFs) の共役受容体として機能することが知られている。我々はこれらHBGFs中で細胞増殖、分化、生存に関わるHB-EGFに注目し研究を行なった結果、GPC1はHB-EGFの受容体である EGFRの共役受容体として働くことと、GPC1をノックダウンした食道癌細胞においては、HB-EGFのシグナル伝達が抑制されることを明らかにした。さらに、独自に開発した抗GPC1モノクローナル抗体がantibody-dependent cellular cytotoxicity (ADCC)依存的な抗腫瘍効果を有することを明らかにした(Harada et al., Oncotarget, 2017)。

近年、モノクローナル抗体を利用して抗癌剤を癌細胞に特異的に送達する技術として抗体薬物複合体(Antibody-drug conjugate:ADC)が注目されている。ADCはモノクローナル抗体にリンカーを介して抗癌剤を結合させたものである。正常組織に発現しておらず癌組織に発現を示す抗原に対するモノクローナル抗体をADC化し、癌患者に投与すると癌抗原を発現する癌組織特異的に抗癌剤を輸送することが出来るため、癌細胞への薬効を保持しつつ、正常組織への毒性を軽減させることが可能となる。我々はGPC1がADCの標的として有用であるのではないかと考え、細胞内侵入活性の高い抗GPC1モノクローナル抗体を探索した結果、数種類のクローンを取得することに成功した。そして、細胞内侵入活性を有する抗GPC1抗体をADC化したGPC1-ADCを独自に開発することに成功した。GPC1-ADCはin vitroでGPC1陰性細胞には細胞増殖阻害を示さず、GPC1陽性細胞に対しては強力な細胞増殖阻害活性を示した(Matsuzaki et al., Int J Cancer, 2017) 。さらに、担癌マウスを用いた薬効解析の結果、GPC1-ADCはGPC1を発現する腫瘍に対して抗癌剤を特異的に輸送し、高い抗腫瘍効果と安全性を発揮すること明らかにした(Matsuzaki et al., Int J Cancer, 2017)。

現在、GPC1をターゲットとした新たな抗癌抗体医薬品の開発を進行中である。

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