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研究内容

HOME研究内容 > 癌細胞膜特異抗原の同定と抗体医薬開発(LSR)

③-2 癌細胞表面分子のプロテオミクス解析と病態解明および創薬への応用

食道癌(③-1)と同様の定量的プロテオミクス手法を用い、正常卵巣上皮細胞と卵巣癌細胞株を用いて細胞膜蛋白質の発現差解析を実施した。その結果、卵巣癌抗原候補分子としてLipolysis-stimulated lipoprotein receptor (LSR)を同定した(Hiramatsu et al., Cancer Res, 2017)。LSRは正常卵巣組織と比較して卵巣癌組織において高く発現し、LSR高発現患者群は低発現患者群と比較して有意に予後不良であった。LSRは卵巣癌のリンパ節転移や大網転移先の癌細胞にも発現しており、癌の転移や腹膜播種などにも関与している可能性がある。

LSRは脂質の細胞内取り込みや細胞接着分子としての機能がある分子である。独自に開発した抗LSRモノクローナル抗体をヒト卵巣癌細胞株移植マウスおよび卵巣癌組織を移植したPDXマウスに投与することで、抗腫瘍活性について検討を行なったところ、抗LSR抗体はADCC活性非依存的な強い抗腫瘍活性を有することをin vivoで明らかにした。この際、抗LSR抗体投与により、癌細胞内の脂肪滴が減少していることから、抗LSR抗体が腫瘍組織内への脂質取り込みを抑制することも確認した。LSR陽性癌細胞はグルコース、FBS欠損培地でVLDLを細胞内に取り込み、細胞の増殖・生存作用を発揮するが、抗LSR抗体はLSRによるVLDLの細胞内への取り込みを阻害することで、VLDLを介した癌細胞の増殖・生存作用を阻害することから、LSRを標的とする抗癌剤は脂質代謝を標的とする新たな抗癌剤としての実用化が期待される。強力な薬効を発揮する抗LSR抗体の詳細な作用機序については、今後さらなる解明を進める。

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