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ワニゴチ Inegocia ochiaii Imamura, 2010(スズキ目カサゴ亜目コチ科)
*近年の硬骨魚類の系統学的研究から ,従来の“カサゴ目” は多系統的な分類群と判明した.

標準和名 (standard Japanese name):学名の代わりに用いられる生物の日本語名称.日本に分布あるいは日本で記録された種に対して1つの和名(一語名)が与えられる.学名のような命名規約はないが,新標準和名は研究機関や博物館に所蔵される参照可能な証拠標本に基づき,学術的な出版物で公表されることが推奨される.また,標準和名は学名とは厳密には同一ではないため,例えば,日本に分布するある種が,これまでに使われていた学名の担名タイプと同一種でないことがわかれば,標準和名はそのままで学名が変更されることがある.

★例えば,コチ科魚類の大型種で食用とされる標準和名ワニゴチ(上の水中写真)には,長らく Inegocia guttata (Cuvier in Cuvier and Valenciennes, 1829)の学名が使われてきた.しかし,最近になって,この学名の担名タイプの調査から,日本周辺に分布する種は I. guttata とは異なる新種と判明し,Inegocia ochiaii Imamura, 2010 の学名が付けられた(ホロタイプは,高知県大月町柏島産で本研究室所蔵のBSKU 48578, 272.4 mm SL).したがって,標準和名ワニゴチの学名は, Inegocia ochiaii となった.

 日本魚類学会の標準和名の定義:標準和名は,名称の安定と普及を確保するためのものであり,目,科,属,種,亜種といった分類学的単位に与えられる固有かつ学術的な名称である.

地方名 (vernacular name):それぞれの地方で呼ばれる名称で,分布の広い普通種には極めて多くの地方名が存在する.標準和名と地方名は厳密に1対1の対応をしていない.経済的に価値の低いものや食用とされないものには,複数種が含まれる場合がある.

参考文献
Imamura, H. 2010. A new species of the flathead genus Inegocia (Teleostei: Platycephalidae) from East Asia.Bulletin of the National Museum of Nature and Science, Series A (zoology), Supplement No. 4: 21-29. ★国立科学博物館の新種記載プロジェクト・魚類の第3弾論文集
中坊徹次・中山耕至.2013. 魚類概説 第三版.pp. 3-30. 中坊徹次,編.日本産魚類検索全種の同定第三版.東海大学出版会,秦野.
瀬能 宏.2012. 魚類における標準和名の考え方と日本魚類学会の取り組み.Pabmixia(昆虫分類学若手懇談会会報), (17): 37-44.

リンク 日本魚類学会標準和名検討委員会