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Eurypegasus draconis (Linnaeus, 1766) ウミテング(ウミテング科 Pegasidae)

動物の学名

タイプに関する用語(国際動物命名規約第4版日本語版より)★印は追加コメント

タクソン(taxon 複タクサ taxa):分類学的単位のことで,名前の有無にかかわらない.すなわち,互いに系統類縁関係をもつことが通常推定され,かつ,その単位(たとえば,ある地理的個体群,ある属,ある科,ある目)を他のそういった単位から識別する形質を共有する複数の生物で構成された個体群1つまたは個体群の集合.あるタクソンは,それが包含するより低い階級にあるすべてのタクソンと生物個体とで構成される.動物命名規約では,上科と亜種,およびその間に位置する階級群に属するタクソンについてだけ,その学名を完全に規制する.
 名義タクソン (nominal taxon):ある適格(たとえば,Mollusca, Diptera, Bovidae, Papilio, Homo sapiens)によって表示されるタクソンという概念.科階級群,属階級群,または種階級群にある名義タクソンは,それぞれある1つの担名タイプに基づいている(ただし,属階級群と種階級群では,現実に固定されていないこともあり得る).

標本 (specimen):ある動物の実例を示すための個体,ある動物の化石または仕業(★たとえば,巣孔,穿孔跡,棲管,繭,足跡など),またはこれらの部分.★学術標本 (scientific specimen)のこと.生物の研究を目的として,適当な防腐処理を施して保存される生物の個体あるいはその一部.動物はアルコールやホルマリンなどの防腐剤溶液につけたり(液浸標本),昆虫のように外骨格の保存が容易なものは乾燥する(乾燥標本).分類学では標本を最も基本となる証拠として扱う(岩波生物学辞典第5版より一部抜粋).

担名タイプ(name-bearing type):タイプ属,タイプ種,ホロタイプ,レクトタイプ,一連のシンタイプ(まとめてひとつの担名タイプを構成する),あるいはネオタイプ.これらはある名義タクソンの学名の適用を決定することができる客観的な参照基準を提供する.★種階級群の場合は,種または亜種の学名の基準となる最重要標本で,シンタイプ以外は唯一の標本.

科階級群 (family group):分類の階級構造において,国際動物命名規約がその学名を完全に規制するタクソン群のうちで最も高い階級にあるもの.科階級群に含まれるものは,上科,科,亜科,族,その他上科よりも低く属階級群よりも高い.必要に応じた任意の階級(たとえば亜族)に位置するタクソン,である.
 タイプ属 (type genus):ある科階級群の名義タクソンの担名タイプである名義属.

属階級群 (genus group):分類の階級構造において,科階級群と種階級群との間に位置するタクソンの群.属階級群が含むのは,属・亜属にあるタクソンである.
 タイプ種 (type species):ある名義属または名義亜属の担名タイプである名義種.

種階級群 (species group): 動物分類において,その学名が国際動物命名規約で規制される最も低い階級にあるタクソンの群.種階級群は種および亜種の階級にあるすべてのタクソンを含む.

ホロタイプ(holotype):ある名義種または名義亜種が設立された時にその担名タイプとして指定されるか,またはその他の方法で固定された唯一の標本(ただし,*ハパントタイプの場合を除く).★旧訳では完模式標本.

パラタイプ (paratype[s]):*タイプシリーズを構成する標本のうち,ホロタイプ以外の各々.★旧訳では副模式標本.

シンタイプ (syntype[s]):これまでにホロタイプもレクトタイプも指定されたことがないタイプシリーズの,各々の標本.一連のシンタイプはひとまとまりでひとつの担名タイプを構成する.

レクトタイプ(lectotype):ある名義種または名義亜種の設立後,シンタイプのなかから唯一の担名タイプ標本として指定されたもの.

パラレクトタイプ(paralectotype[s]):それまで一連のシンタイプであった複数の標本において,レクトタイプが1つ指定された後に残った各々.

ネオタイプ (neotype):ある名義種または名義亜種において,それを客観的に定義する必要がありながらその担名タイプが全く存在しないことが信じられる場合に,担名タイプとして指定される唯一の標本.現存する担名タイプが分類学的観点から不適当であるか,またはある学名の慣用法に合致しないため,学名の安定性と普遍性が脅かされる場合には,審議会はその強権を発動して問題のタイプを破棄し,ネオタイプを指定することができる.

タイプシリーズ (type series):原著者がある新しい名義種階級群タクソンの基礎とした一連の複数標本のこと.

タイプ標本 (type specimen):国際動物命名規約で規定された用語で,ホロタイプ,レクトタイプ,あるいは,ネオタイプを指すか,あるいは,ある一連のシンタイプの中のひとつを指す;さらに,一般的に,タイプシリーズを構成する標本のどれかを指して用いられる.

タイプ産地 (type locality):ある名義種または名義亜種の担名タイプが捕獲,採集もしくは観察された地理的な(そして,それが相応しければ層序上の)場所.

異名 (synonym):1つの分類学的タクソンを表示するために用いられる,同じ階級にある複数の学名の各々.
 古参異名(senior synonym):<2つの異名のうちの>先に設立されたもの.ただし,同時に設立の場合には条24により優先権を与えられた方(*より高い階級が優先される.亜種より種として付けられたものが優先).
 新参異名 (junior synonym):<2つの異名のうちの>後で設立されたもの.ただし,同時に設立の場合には条24により優先権を与えられなかった方.

異名関係 (synonymy):複数の異名の間の関係.

同名 (honomym):(1) <<科階級群において>>異なる名義タクソンを示し,綴りが全く同一であるか接尾辞だけが異なる複数の適格名の各々.(2) <<属階級群において>>異なる名義タクソンを示し,綴りが全く同一である複数の適格名の各々.(3)<<種階級群において>>異なる名義タクソンに対して設立され,かつ,設立時(一次同名)あるいは(二次同名),ある同じ属名と結合した,綴りが同一かまたは条58の下で同じ綴りと見なされる複数の適格な種小名または亜種小名の各々.

同名関係 (homonymy):複数の同名の間の関係.

命名法 (nomenclature):学名とその形成・使用に関する条項とで構成されるなんらかの体系.

 二語名法 (binominal nomenclature):種という階級のみにおいて,そこに位置するタクソンの学名は2つの学名の結合(二語名)で表示されるとする,命名法の体系.

 二語名法の原理 (Princeple of binominal nomenclature):種という階級のみにおいて,そこに位置するタクソンの学名は2つの学名の結合( 二語名)で表示されるとの原理.三語名を亜種名に対して用いること,そして,一語名を種階級群名よりも高位のタクソンに対して使用することは,この原理と矛盾しない(条5と条11.4).

*亜属を表記する場合は三語となるが,本来の二語名と三語名には含まれない.亜属はカッコ付きで属名と種小名の間に入れる(挿入名).
 例:Coryphaenoides (Nematonurus) armatus (Hector, 1875) ヨロイダラ(タラ目ソコダラ科ホカケダラ属ネマトヌルス亜属)

*亜種を表記する場合は三語となり,亜種小名は種小名の後に入れ,カッコは付けない
 例:Merluccius australis australis (Hutton, 1872) ヒタチダラ(タラ目メルルーサ科メルルーサ属)
   Merluccius australis polylepis Ginsburg, 1954 *和名なし(タラ目メルルーサ科メルルーサ属)

 動物命名法 (zoological nomenclature):動物のタクソンに対する学名とその学名の形成・処遇・使用に関する条項とで構成される体系.

先取権 (priority):学名の先取権 (priority of a name),あるいは命名法的行為の先取権 (priority of a nomenclatural act);適格になった日付が早いほど優先されること.


Laboratory of Marine Biology, Faculty of Science and Technology, Kochi University (BSKU)