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Metabolomics解析

病気診断や毒性学など多くの分野で、代謝による最終産物、あるいはその中間体の解析Metabolomicsが注目されている。Metabolomicsは、「動的な代謝反応の量的な解析」と定義される多変量統計法である。Metabolomicsの分析手法は、主に質量分析法が用いられている。質量分析法において、代謝産物はバイアスなしに網羅的にカタログ化され、代謝産物同士の関係が特徴づけられることなどから、医療の場においても診断や薬物代謝への応用が期待されている。尿などの試料中に含まれる代謝物を網羅的に測定することで、生体や組織、細胞における代謝物プロファイルの変動を検出することができ、代謝等に影響を及ぼす様々な生物学的事象の解明に用いられている。質量分析法(MS)は、代謝産物の定量及び定性的な分析が可能である。更に質量分析における代謝物の分析・同定に用いるフィンガープリントライブラリーが、急速に整備され、分析感度及び分析特異性の向上が図られている。特に、最近、ガスクロマトグラフィー(GC)と質量分析が組み合わされたGC/MSが、最も広く使われ、強力な手法となっている。
私たちの研究室では、中国チャムス大学と協同で、Metabolomics解析を用い、各種疾患の新しい診断技術の開発を行っている。


○病態モデル動物に対する生薬の臨床効果のMetabonomics解析

生薬等の有効性・安全性の評価は、主に血液成分や組織学低評価などが指標とされている。生薬は多成分系であるため、疾患に対する臨床効果を推測する手段としてMetabonomics解析の応用が期待される。 我々は、生薬(金銀花)を投与した肝障害モデル動物から採取した尿中の代謝物を指標として、Metabonomics法により解析し、生薬製剤服用後の代謝物の解析及びその診断・治療への応用について検討している。



○尿の臭気情報による膀胱がん新規スクリーニング法の開発

イヌが尿のにおいから膀胱がん患者を嗅ぎ分けるとういう報告がある。膀胱がん患者の尿から同定された物質はいくつがあるが、イヌが嗅ぎわけた膀胱がんの原因物質の同定には至っていない。そこで我々は、尿臭気をMetabolomics解析し、尿臭気を網羅的に検討することで臭気に注目した膀胱がんの新規スクリーニング法の開発に着想した。
本研究は臨床試験を実施し、手術により膀胱がんの完全切除が見込まれる患者の手術前および手術後の尿を採取し、その尿臭気をGC/MSにて分析を行い、 Metabolomics 解析することにより膀胱がんの有無の判別できるか検討している。
本研究は、臭気に注目した非侵襲的な膀胱がんの新規スクリーニングとなると期待される。

特許 第5936181号 「膀胱癌の測定方法、または癌治療後の予後の判定方法」

 

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