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Phylum Nematoda 線形動物門(せんけい)*ギリシャ語で “nema=糸,eidos=形”の意味
 双器綱 *双器をもつが,双腺をもたない
 双腺綱 *双器と双腺をもつ

*3綱31目267科2,829属24,783種
(Hodda, 2011)
*世界各地のあらゆる場所に生息し,自活性あるいは寄生性,体サイズは 約0.1 mm から最大で8 m
*地球上でもっとも個体数の多い動物門


線形動物の特徴
1.三胚葉性,左右相称,偽体腔,体節はなく,細長い円筒形の体をもつ
2.体表に厚いクチクラ層をもち,通常4回の脱皮で成長する
3.頭部には化学受容器官の双器(amphid)をもつ
4.筋肉質の消化管は発達し,体の前端に口が,その直後に筋肉質の咽頭があり,
後端付近に肛門が開く
5.神経環が食道の中央部を取り囲む.はしご状神経系で,腹側の長軸方向に神経索が走る
6.筋肉系は縦走筋のみで,長軸方向の神経索と連絡する
7.上皮は長軸方向の神経索を包み込み
8.循環器系と呼吸器系を欠く
9.排出器官はないが,1〜2個の排出細胞(renette cells)をもつ

10.多くは雌雄異体で,1個または1対の生殖腺をもち,交尾による体内受精を行う
  *高度に決定的な卵割様式で,らせん型とも放射型とも異なる.通常は直接発生で幼生期がない(寄生性の種では感染期に幼生をもつ)
11.雄は総排泄腔に肛門と陰茎をもち,雌は生殖口である陰門(雌性生殖孔)を別にもつ
12.双腺綱には体の後半に双腺をもつが,その機能は不明
13.植物にも動物にも寄生し,多様な生活環をもつ

寄生性の線形動物
1.アニサキス・シンプレックス(♂全長5~12cm ,♀全長8~20 cm) 終宿主はクジラ類やアザラシ類の消化管に寄生
2.フィラリア(犬糸状虫)(♂全長12~18cm ,♀全長25~30 cm) イヌの心臓の右心室に寄生

3.カイチュウ(回虫)(♂全長15~25cm ,♀全長20~40 cm) ヒトの小腸に寄生
4.ギョウチュウ(蟯虫)(♂全長3~5mm ,♀全長8~13 mm) ヒトの盲腸や結腸上部に寄生
5.マツノザイセンチュウ カミキリムシを媒介し,マツ枯れを引き起こす *マツクイムシ

発生学・遺伝学の実験動物
土壌線虫の一種 シー・エレガンス Chaenorhabditis elegans  

 *受精卵が成虫に発育するまで,すべての細胞組織分化の全系譜が調べられた.また,1000個ほどの遺伝子をもち,多細胞動物では初めて全ゲノムの塩基配列が解読されたことで有名.

系統
 分子生物学的な知見から,線形動物が寄生生活を複数回獲得したことが示唆された.また,吻が反転するグループは,同様の吻をもつ類線形・動吻・胴甲・鰓曵動物と近縁であるかもしれない.脱皮動物のうち,線形動物と類線形動物は,分子系統解析から姉妹群と推測され,線形動物 Nematozoa としてまとめられている.

参考文献
藤田敏彦.2010. 新・生命科学シリーズ 動物の系統分類と進化.裳華房,東京.194pp.
Hodda, M. 2011. Phylum Nematoda Cobb 1932. Pages 63-95. In: Zhang, Z.-Q. (Ed) Animal biodiversity: an introduction to higher-level classification and taxonomic richness. Zootaxa 3148: 1-237.


Hiromitsu ENDO