分類体系のページへ戻る脊索動物門のページへ戻る 更新日:2017/06/23



マボヤ(左,須磨水族園)とクロスジツツボヤ(右,高知県柏島)(写真撮影:遠藤広光)


Subphylum Urochordata 尾索動物亜門(びさく) (ca. 3,000種) ホヤ類,サルパ類 *数mmから数十cm
* Phylum Tunicata (sensu Zhang, 2013)
 Class Appendicularia (=Larvacea) オタマボヤ綱 *一生を通じて尾に脊索をもち,終生浮遊生活を送る オタマボヤ
 Class Thaliacea タリア綱 *幼期の一時期のみに脊索をもち,終生浮遊生活を送る
  Subclass Pyrosomata ヒカリボヤ亜綱 ヒカリボヤ
  Subclass Myosomata ウミタル亜綱 ウミタル類,サルパ類
 Class Ascidiacea ホヤ綱 *幼生は浮遊生活,その後は基盤に固着して底生生活を送る.幼生期のみ脊索をもつ
             マンジュウボヤ,ユウレイボヤ,オオグチボヤ,マボヤ,キクイタボヤ


おもなの特徴
1. 左右相称で,体型はおよそ袋型,つぼ型あるいはオタマジャクシ型
2. 体は単体節性で, 頭部,付属肢や顎がない,口とU-字型の消化管,肛門がある
3. 尾部をもつ幼生や成体では、背側に脊索と神経管をもつ *オタマボヤのみ終生脊索をもつ
4. 体の外側を覆う被嚢(tunic)または包巣(house)をもつ 
 *表皮が分泌したセルロースやタンパク質を成分とする厚い結合組織.ホヤ類では厚い皮状
5. 全身が筋膜に覆われ,筋肉に節はない
6. 入水孔から取り入れた海水を咽頭で濾過する.水は咽頭の鰓裂や孔から囲鰓腔へ抜け,出水孔から排出される
 *咽頭内の腹側にある内柱から分泌される粘液シートで捕捉し,粘液ごと胃へ送る
7. 開放血管系をもつ ホヤ綱では血流が定期的に逆転し,血球細胞に高濃度の重金属(とくにバナジウム,ニオビウムや鉄)を含む
8. 真体腔は囲心腔となる(裂体腔的に形成される)
9. 口と出水孔の間に神経節があり,そこから体各部へ神経が延びる
10. 排出器官はない
11. 多くは雌雄同体
12. 単体または無性生殖(出芽)により群体を形成す *ホヤの無性生殖は,横分体形成,囲鰓腔壁出芽および芽茎出芽の3型
13. オタマジャクシ型の浮遊幼生期を経る
14. 複雑な生活史をもつ*
 *サルパやウミタル類は,無性世代と有性世代を繰り返す世代交代を行う(受精卵から生じた卵生個虫,卵生個虫から生じた芽生個虫とが交互に出現).サルパとウミタル類では異なり,ウミタル類はより複雑な生活史をもつ.
15. 発生は放射卵割,通常は非決定的な間接発生
16. すべて海産の濾過食者

系統
近年の分子系統解析から,尾索動物ではオタマボヤ類が最初に分岐し,次にホヤ目(壁性類)のホヤ類,残る4群は単系統群となり,腸性類のホヤ類とヒカリボヤ,サルパとウミタル類がそれぞれ姉妹群を形成する仮説が出された.ホヤ綱とタリア綱は単系統群とならない.また,幼形進化的なグループであるオタマボヤ類は,遺伝子の分子進化速度が極めて速く,系統的位置の推定が難しいことが知られる.

化石
中国澄江のカンブリア紀初期の堆積層からは,固着性のホヤ類とみられる複数の化石種が報告された.


リンク
脊椎動物門,新たな創設.沖縄科学技術大学院大学 OISTプレスリリース(2014/09/17) *これに従うと尾索動物門となる
Shape of Life Chordates: We're All Family


参考文献
藤田敏彦.2010.新・生命科学シリーズ 動物の系統分類と進化.裳華房,東京.194pp.
本川達雄.2009.図説 無脊椎動物学.朝倉書店,東京.575pp.
和田 洋.2012.尾索動物.Pp. 313-317. 日本進化学会,編.進化学事典.共立出版,東京.
Zhang, Z.-Q. 2013. Animal biodiversity: an update of classification and diversity in 2013. Zootaxa, 3703(1):005-011.


Hiromitsu Endo