◆医学部附属病院病理診断科の山本由美子客員講師、設備サポート戦略室の林芳弘技術専門職員、医学部病理学講座の村上一郎教授らの研究グループの研究成果が、医学ジャーナル『Oncology Reports』の電子版に掲載されました

2023年7月3日

「ファシン」は乳がん細胞が転移に使う「フィロポディア」の形状と転移のパターンに影響していることが明らかに

 

 医学部附属病院病理診断科の山本由美子客員講師、設備サポート戦略室の林芳弘技術専門職員、医学部病理学講座の村上一郎教授らの研究グループの研究成果が、医学ジャーナル『Oncology Reports』の電子版に2023年6月16日付けで掲載されました。

 乳がんは、日本人女性(30歳~64歳の世代)の死亡原因第1位であり、その件数は増加の一途をたどっています。しかし、早期発見と早期治療により死亡率は著しく低下します。また、乳がんの転移を防ぐ治療法の研究は非常に大切なテーマです。その転移に関係するタンパクのひとつが「ファシン」です。

 「ファシン」は、がん細胞が転移する時に必要な「フィロポディア」と呼ばれる仮足(偽足)(※)を構成するタンパクです。本研究グループは、乳がんに「ファシン」の発現が多いと「フィロポディア」は細長く糸状で、乳がん細胞はばらばらに転移し、「ファシン」の発現が少ないと「フィロポディア」は糸状から風船状に形を変化させ、乳がん細胞は集団で転移するということを発見しました。このことから、「ファシン」は乳がん細胞が転移に使う「フィロポディア」の形状と転移のパターンに影響していることが明らかになりました。

 「ファシン」は、乳がんに限らず、いろいろながんの転移に関わるタンパクとして注目されていますが、その働きにはまだまだ多くの謎があります。この研究の成果により、「ファシン」とがん転移のメカニズムが一層明らかになり、今後、乳がんの転移を抑制する薬剤開発に大きく貢献できることが期待されます。

 

<論文名> Downregulation of fascin induces collective cell migration in triple‑negative breast cancer

<和 訳> Fascinの発現低下は、トリプルネガティブ乳がんの集団細胞遊走を誘導する

 論文の詳細はこちらから

 

 

(※)仮足(偽足)…真核細胞にみられる細胞質の一時的な突出のこと。ガン細胞の浸潤も膜状仮足の働きによることが知られている。

 

 

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