公開日 2025年6月25日
医師の完璧主義的な性格が患者さんとの共同意思決定の障壁に？
大学院博士課程医学専攻２年の森下繁美さん及び医学部医学科臨床疫学講座の佐田憲映特任教授らの研究グループの研究成果が、Oxford University Press社が発行する国際学術誌「Rheumatology」に掲載されました。
近年、医療現場では、医師と患者がともに治療方針を決定する「共同意思決定（SDM: shared decision-making）」が重要とされています。このSDMに、医師の性格が影響するかどうかは、これまで分かっていませんでした。
本研究では、全国の５施設の全身性エリテマトーデス（SLE）患者さんとその診療に関わる医師を対象とした多施設共同研究TRUM2-SLE研究のデータを用いて、医師の性格特性の一つである「ビッグファイブ性格特性」が、患者さんが評価したSDMにどのように関係しているかを検討しました。
登録されたSLE患者さん493名とその主治医43名を対象に、医師の性格を「Ten-Item Personality Inventory-Japanese version（TIPI-J）」で、患者さんによるSDMは「SDM-Q-9スケール」で評価しその関連を検討しました。その結果、５つの性格特性のうち、誠実性（conscientiousness）と神経症傾向（neuroticism）が高い医師ほど、担当患者さんのSDM評価スコアが低いことが明らかになりました。この誠実性と神経症傾向は、「完璧主義」としてまとめられる性格特性です。クラスタリング分析という方法で、医師を３つのクラスターに分けたところ、やはりこの「完璧主義」というクラスターがみつかり、SDMと関連していることが確認されました。これらの結果から、医師の完璧主義的な性格はSDMの実践における障壁となりうる可能性が示されました。
本研究は、患者さんとのSDMの質向上に向けて、医師自身の内面的特性にも目を向ける必要があることを提起する重要な知見であり、医療者教育などへの応用が期待されます。
【プレスリリース】医師の完璧主義的な性格が患者さんとの共同意思決定の障壁に？[PDF：278KB]
【論文情報】
＜論文名＞Association of physicians' Big Five personality traits with shared decision-making in patients with systemic lupus erythematosus
＜和訳＞ ※全身性エリテマトーデス患者の共同意思決定と医師のビッグファイブ性格特性との関連
＜著者名＞ Shigemi Morishita , Ken-ei Sada , Masataka Kudo , Naofumi Dobashi , Sho Sasaki , Ryusuke Yoshimi , Natsuki Sakurai , Chiharu Hidekawa , Yasuhiro Shimojima , Dai Kishida , Takanori Ichikawa , Yoshia Miyawaki , Keigo Hayashi , Kenta Shidahara , Yuichi Ishikawa , Nao Oguro , Nobuyuki Yajima , Noriaki Kurita , Narufumi Suganuma
＜雑誌名＞ Rheumatology, (2025)
※本論文はオープンアクセスですので、こちらより自由にダウンロードできます。
