公開日 2025年7月7日
~デリバリー効率と安定性を向上、次世代RNAi医薬でがん治療のブレークスルーを目指す~
医学部消化器内科学講座の谷内恵介准教授が参加している研究開発課題、「葉酸結合型カチオン性ペプチドとsiRNAを用いた革新的次世代核酸医薬品の研究開発」が、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業」に採択されました。本課題は、東京理科大学の佐藤講師、和田教授らが独自に開発した、RNA/RNA二本鎖安定化カチオン性ペプチド「Dabオリゴマー」技術と、東京科学大学の程特任教授(前・東京大学准教授)らが開発した一塩基変異mRNA特異的siRNA設計法「SNPD-siRNA(Single Nucleotide Polymorphism-Distinguishable siRNA)」を活用した次世代核酸医薬品の研究開発課題です。
RNAi(RNA干渉)を利用した核酸医薬は、2018年に初の製品が上市されて以来、精力的に研究・開発が進められている注目の創薬モダリティです。一般的に用いられるsiRNA(small interfering RNA)は20塩基対程度のRNA二本鎖ですが、その標的臓器へのデリバリー効率の低さが課題であり、特に難治性癌である膵癌へのデリバリーは非常に困難とされていました。
このような背景のもと、東京理科大学の佐藤講師、和田教授らは、RNA/RNA二本鎖が形成するらせん構造に特異的に結合し、これを安定化する新規カチオン性ペプチド「Dabオリゴマー」を独自に開発し、さらに、谷内恵介准教授との共同研究により、Dabオリゴマーに葉酸を導入することで、葉酸の取り込みが亢進している膵癌への送達を効率化することを可能にしました。
谷内准教授は蛍光標識したsiRNAと、葉酸を結合したカチオン性ペプチド、Fol-Dab8の複合体を膵癌オルガノイドマウスに尾静脈投与することで、siRNAが膵癌特異的に送達されることを見出しています。
本共同研究開発課題では、この革新的なDabオリゴマーと葉酸複合体の技術を基盤とし、一塩基変異mRNAのみを高精度に抑制する「SNPD-siRNA」を組み合わせることで、特に治療が困難な膵癌をはじめとする遺伝子変異疾患に対し、副作用を最小限に抑えつつ、画期的な治療効果を発揮する次世代核酸医薬品の開発によって、難治性癌である膵癌をはじめとする様々な疾患に苦しむ患者さんに、新たな治療の光をもたらすことを目指します。
研究開発課題名: 次世代送達技術を用いた医薬品研究開発/開発候補品の非臨床試験および製造方法の確立/葉酸結合型カチオン性ペプチドとsiRNAを用いた革新的次世代核酸医薬品の研究開発
主要ターゲット疾患: 膵癌
事業名: 次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業(次世代送達技術を用いた医薬品研究開発/開発候補品の非臨床試験および製造方法の確立)
他参加機関: 東京理科大学(代表機関)、東京大学、東京科学大学、日本大学、金沢大学、株式会社日本触媒、株式会社ANRis