公開日 2025年9月3日
火星の気候変動の足跡:中緯度クレーターに記録された氷のタイムカプセル
高知大学自然科学系理工学部門の長谷川精准教授らの研究グループは、NASAの探査機による高解像度画像(HiRISE、CTX)を用いて、中緯度の750以上のクレーターを調査しました。氷によって形成された地形やクレーター年代、さらに気候モデルを組み合わせることで、過去約6億年の氷の蓄積と分布の変化を明らかにしました。
その結果、氷は常にクレーター南西側にたまりやすいことが判明しました。これは、日射量の低下や影による「コールドトラップ」が原因であることが分かりました。さらに、過去に起きた氷の蓄積は1回ではなく2〜3回あり、それぞれで供給方向や厚さが異なり、火星の自転軸の傾きの変動に伴う気候変化が影響していました。
約6億4千万年前には氷が厚く広がっていましたが、その後減少し、最後の氷の蓄積(約9800万年前)では限られた分布になりました。これは、火星が湿潤な時代から乾燥寒冷な時代へ移行したことを示しています。
本成果は、火星の氷と気候の歴史解明だけでなく、将来の探査での水資源利用にもつながる重要な知見です。この研究成果は9月3日午前1時(日本時間)、米国地質学会の国際誌「Geology」に掲載されました。
【プレスリリース】火星の気候変動の足跡:中緯度クレーターに記録された氷のタイムカプセル[PDF:2.07MB]
■論文情報
論 文 名:Long-term and multi-stage ice accumulation in the martian mid-latitudes during the Amazonian
掲 載 誌:Geology (Geological Society of America)
著 者:Trishit Ruj, Hanaya Okuda (奥田 花也), Goro Komatsu (小松 吾郎),
Hitoshi Hasegawa (長谷川 精), James W. Head, Tomohiro Usui (臼井 寛裕), Shun Mihira (三平 舜), and Makito Kobayashi (小林 真輝人)
D O I:https://doi.org/10.1130/G53418.1
本研究は、科学研究費助成事業(JP17H06459、JP23K19081、JP24H01036)、日本学術振興会特別研究員奨励費(JP20J20413)の支援を受けて実施しました。