公開日 2025年10月17日
日本の自然保護区が温暖化に対しても温帯性維管束植物の生息地として機能することを解明
黒潮圏総合科学専攻博士課程修了生のJioie Muriel Aquino dela Vegaさん及び自然科学系理工学部門の比嘉基紀准教授らの研究チームの論文が「Global Ecology and Conservation」に掲載され、2025年6月2日に電子版が公開されました。
地球上の生物多様性は、人間活動に起因する土地利用の改変と気候変動によって減少傾向にあります。生物多様性が高い地域への人間活動の影響を緩和することを目的として、様々な保護区が世界各地で設定されてきました。しかし、温暖化が進行した条件下においても生物多様性保全の効果が維持されるのかについては明らかではありませんでした。
dela Vegaさんらの研究グループは、温帯性維管束植物普通種(2,260種)について、種分布予測モデルと気候シミュレーションデータを用いて、現在及び温暖化後の潜在生育域を推定し、温暖化の進行後も生物多様性保全の効果が維持されるのかを検討しました。解析の結果、多くの先行研究と同様に、対象種の潜在生育域の縮小が予測されるものの、保護区全体から潜在生息域が消失する種は限られることを明らかにしました。
この結果は、現在の保護区ネットワーク、特に中部山岳地域の保護区が、温暖化が進行した条件においても温帯性維管束植物普通種の保全に寄与することを示唆しています。
題 名:Effectiveness of the protected area for the plant species diversity conservation under the changing climate
著 者:dela Vega, J.M.A.a), Higa, M. b), Kubota, Y. c,d), Nakao, K. e)
所 属:a高知大学大学院総合人間自然科学研究科・b高知大学理工学部・c琉球大学理学部・d株式会社シンク・ネイチャー・d森林総合研究所関西支所