公開日 2026年2月4日
水銀灯に代わるUV-C LEDで魚の病気を防ぐ
―陸上養殖システムにおける新しい殺菌技術の検討―
希望創発センターの宝金実央特任助教と総合科学系黒潮圏総合科学部門の大島俊一郎教授らの研究成果が「Aquacultural Engineering」誌オンラインに掲載されました。
深紫外発光ダイオード (UV-C LED) は、長寿命、無水銀、ウォームアップの不要といった特性から、従来の水銀灯を用いた紫外線殺菌器に代わる次世代の殺菌装置として注目されています。閉鎖循環式陸上養殖システム (Recirculating Aquaculture Systems:RAS) では魚病対策として水銀灯殺菌器が使用されていますが、消費電力が大きく、ランニングコストも高額という課題があります。そこで本研究では、各種魚病細菌に対するUV-C LED照射による殺菌効果ならびにRASにおける深紫外発光ダイオードの実用化に向けた紫外線照射による細菌感染症の拡大抑制効果について検討しました。
供試菌として、エドワジェラ症原因菌 Edwardsiella tarda、ビブリオ病原因菌 Vibrio rotiferianus、滑走細菌症原因菌Tenacibaculum maritimum、α型溶血性連鎖球菌症原因菌 Lactococcus garvieae、β型溶血性連鎖球菌症原因菌 Storeptcoccus iniaeおよびノカルディア症原因菌Nocardia seriolaeを用いました。まず、これらの供試菌液に対するUV-C LED照射による殺菌効果を調べ、次に、E. tarda菌液をRAS内で均等に攪拌後、紫外線を照射し、経時的に海水中の生菌数を測定しました。さらに、UV-C LED照射の殺菌効果に加え、RASにおける水量および循環流量を用いて水槽内の減菌率をシミュレーションにより試算しました。その結果、全ての供試菌に対してUV-C LEDによる殺菌効果が認められ、RAS内のE. tardaの生菌数は、紫外線照射後、経時的に減少しました。またシミュレーション結果からは、UV-C LED照射下において、水量ならびに循環流量に基づく減菌率の予測が可能であり、E. tardaを含む飼育水を介した細菌感染を抑制する効果が確認されました。
本研究成果は、UV-C LEDを使った新しい殺菌方法が、魚の養殖現場で安心して使える技術として役立つ可能性が示されました。魚の病気を防ぎながら、環境への負担を抑えた、持続可能な養殖システムの実現に貢献することが期待されます。
【論文情報】
論文タイトル:Infection control of fish pathogenic bacteria using deep ultraviolet irradiation in recirculating aquaculture systems
著者:Mao Hokin, Natsumi Nagahiro, Hiroaki Enomoto, Naoto Yabuki, Syun-ichirou Oshima
雑誌名:Aquacultural Engineering
URL:https://doi.org/10.1016/j.aquaeng.2025.102681

