これからの保健師に求められる情報技術能力

〜市町村と四年制大学の意識実態分析〜

 

入野 了士、藤井秀明

高知医科大学医学部看護学科

 

【目的】 市町村の保健課(センター)責任者が保健師に求めている情報技術能力と、それらの能力を看護系四年制大学の地域看護学担当教官及び看護情報学(又は情報科学)担当教官が教育レベルとしてどのように位置付けているのかをアンケート調査を行って明らかにする。

 

【対象と方法】 対象とした市町村は、「地域インターネット導入促進事業」に参加している680市町村の中から、乱数表による無作為抽出により抽出した211市町村である。また、対象とした看護系四年制大学は、平成13年度時点で開学していた89大学である。調査方法は、平成13年10月19日に調査用紙を発送して、同年11月2日までの投函を依頼した。調査項目は、IMIA(International Medical Informatics Association)が保健・医療分野におけるITユーザーおよび保健・医療専門家に求められる情報技術能力のレベル付けを示した資料を基に作成した。

 

【結果】

1.            回収数は、市町村が211通中113通、看護系四年制大学が178通中65通であった。

2.            アンケートに対してCronbachのalphaを求めると、市町村0.98、大学0.93であり、ともに0.8以上で1に近いことから、高い信頼性を示している。

3.            各アンケート項目に対して、市町村における意識は「必須」と「望ましい」のほぼ2つに分かれ、「必要なし」の回答は少なかった。特にコンピューター・リテラシー及び統計処理能力に関する項目では「必須」の回答が多かった。システムの管理・運営能力に関しては、「望ましい」が大部分を占めた。

4.            大学における意識は、コンピューター・リテラシー及び統計処理能力に関する項目について、「学部レベル」という位置付けを示していた。システムの管理・運営能力については、「看護大学以外のレベル」と見なす傾向が見られた。

 

【結論】

@地域で必須であり、看護系大学も学部レベル教育と位置付けている情報技術能力はコンピューター・リテラシーおよび統計解析能力である。A市町村がシステムを管理・運営できる人材を求めている度合いが高いのに対し、大学では看護系大学の教育と位置付けていない傾向が強かった点で、両者に大きな意識の差が見られた。B両者の意識の相違は、市町村では実際の業務内容に必要度が依存することから、応用的な情報技術能力が必要とされているのに対し、大学では学生にシステムそのものを学ばせることよりも、基本的な情報技術を教えることで、将来的な応用力をもたせようとしていると考えられる。