研究紹介

Stat3阻害薬による乾癬の新規治療法

Stat3阻害薬による乾癬の新規治療法
担当:三好 研(土佐市立土佐市民病院皮膚科医長)

我々は、乾癬の表皮角化細胞にStat3が活性化していることを見出した。Stat3はIL-6などのサイトカインや多様な成長因子の刺激により活性化し、細胞の増殖、遊走、生存などに関わる分子の遺伝子発現を制御する。活性型Stat3を恒常的に表皮に発現させたトランスジェニックマウス(K5.Stat3C)は、創傷刺激やホルボルエステル外用の刺激によって乾癬様の皮疹を発症し、これを新たな乾癬モデルマウスとして報告した(Sano S, et al. Nat Med, 2005, 11, 43)。
この論文の発表後、Th17が乾癬発症に重要な働きをしていることが相次いで報告され、とくにTh17の産生するIL-22が表皮細胞のStat3を活性化することが分かった。すなわち、乾癬の発症に必要なStat3を表皮—T細胞間クロストークにおける終着分子のひとつとしてとらえることが可能になった。これを証明するためStat3の小分子阻害薬STA21を用いて解析を行った。STA21は角化細胞の増殖を抑制し、逆に分化を促進する働きがあることが明らかになった。
次にSTA21を外用薬として治療効果を検討したところ、K5.Stat3Cマウスの乾癬様皮疹発症が抑制できたのみならず、ヒト乾癬皮疹においても約7割の患者で臨床的に有効であった。
以上の結果より、Stat3は乾癬の分子標的となり得ることが明らかとなった。

画像 画像

    ヒト乾癬皮疹におけるSTA21軟膏の効果

  • PubMedMiyoshi et al, J Invest Dermatol, 2011, 131, 108