研究紹介

TNF阻害薬のT細胞に対する効果

TNF阻害薬のT細胞に対する効果
担当:志賀 建夫(医療法人川村会くぼかわ病院皮膚科医長)

乾癬では近年、IL-23/Th17軸が病態の中心的な役割を果たすことが報告されている。事実、IL-23やIL-17を標的とする生物製剤が乾癬の治療に用いられ、良好な治療効果が得られている。
一方、TNF阻害薬はIL-23/Th17軸の上流に存在するTNF-α、iNOS産生樹状細胞(Tip-DC)に作用すると考えられてきた。Th17細胞もTNF-αを産生することが知られていたが、TNF阻害薬がT細胞にも作用しうるかははっきりしていなかった。そこで末梢血からT細胞のみを分離した上でTh17誘導を行い、T細胞に対するTNF阻害薬の効果を検討した。Th17誘導細胞はTNF-α、IL-17Aのいずれをも産生しており、そこにTNF阻害薬(エタネルセプト、アダリムマブ)を添加するとIL-17Aの産生が抑制された。
またTh17誘導した細胞に発現しているTNF-α受容体(TNFR2)を抗体で阻害した場合もIL-17Aの産生は抑制された。
以上のことからTNF阻害薬はTNF/TNFR2シグナルを標的として、乾癬におけるTh17細胞の働きを減弱させるものと考えられた。

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