研究紹介

Mowat-Wilson症候群の原因遺伝子ZEB2のコラーゲン合成経路への関与

Mowat-Wilson症候群の原因遺伝子ZEB2のコラーゲン合成経路への関与
担当:寺石 美香

Mowat-Wilson症候群(MOWS)は重度知的障害、特徴的顔貌、小頭症を3主徴に、ヒルシュスプルング病(巨大結腸症)、先天性心疾患などの合併を特徴とする症候群で、ZEB2遺伝子の突然変異によって生じる。MOWS患者の皮膚症状については詳細な検討がなされていなかったが、我々は同患者の皮膚に過進展、関節の過屈曲、皮膚萎縮性瘢痕など、Ehlers-Danlos症候群(EDS)に似た症状を確認した。
MOWS患者は健常人に比べ、超音波検査で真皮が菲薄し、更に電子顕微鏡では真皮コラーゲン線維束の径の小型化、形状の不整化といった、EDSでみられる異常を示していた。
我々は、ZEB2遺伝子を欠失させたマウスを作製し、皮膚の性状、電子顕微鏡での形態がMOWS患者と類似していることを確認した。このマウスの線維芽細胞でコラーゲン合成に関与する種々の遺伝子発現を検討した結果、コラーゲンの合成経路が抑制され、分解経路が亢進していることが示された。ブレオマイシンによる線維化誘導でも線維化反応の減弱を認めた。
以上より、本研究はZEB2の変異や欠失が線維芽細胞の異常なコラーゲン合成、分解を生じる原因となることを示し、ZEB2を標的とした線維化疾患に対する新規治療法の可能性を与えている。

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