研究紹介

乾癬様病変の成立に活性化したLangerhans cell(LC)

乾癬様病変の成立に活性化したLangerhans cell(LC)
担当:中島 喜美子

乾癬は、多遺伝子・多因子性の複合的要因のもとに、表皮と免疫細胞間の病的クロストークにより発症する。皮膚に存在する細胞は、この病的クロストークに何らかの形で関与していることが想定される。我々は、Langerhans cell(LC)が、乾癬表皮において、大型化し、樹状突起を伸ばしていることを観察した。
K5.Stat3Cマウス(乾癬モデルマウス)の乾癬様病変においてもLCは同様の形態を示しCD80, CD86を発現し活性化していた。さらに、K5.Stat3Cマウスの皮膚所属リンパ節に遊走するLCは、TPA塗布し乾癬病変を誘導したK5.Stat3Cマウスだけでなく、無処置のK5.Stat3Cマウスにおいても増加していた。これは、stat3が活性化した表皮細胞におけるLCsは活性化しやすいことを示唆する。
乾癬病変におけるLCの活性化が乾癬病変成立の原因なのか、結果なのかを検討するために、K5.Stat3Cマウスとジフテリア毒素(DT)投与によりlangerin(lang)陽性細胞が除去されるlangerin-DTR KIマウスを交配したK5.Stat3C; Langerin-DTR KIマウスを用いた。K5.Stat3C; Langerin-DTR KIマウスにおいては、TPA塗布によって表皮肥厚は誘導されず、IL-17A, IL-17F, IL-22, IL-23遺伝子の発現は低下していた。
次に、K5.Stat3Cマウスの表皮からLCを単離し、マイクロアレイを施行したところ、Il-12b, Ccl8, Il-6, Cxcl10などの高発現を認めた。IL-12b(p40)は、IL-12とIL-23の共通のサブユニットであり、K5.Stat3Cマウスの乾癬様病変および皮膚所属リンパ節においては、IL-23p19、IL-12/23p40遺伝子のレベルが高かった。そこで、K5.Stat3Cマウスの乾癬様病変よりLCを採取し、FACSを施行したところ、LCはIL-23を産生していることを確認した。さらに、ヒトの乾癬病変表皮においても, CD1a (LC)とIL-23の共染色がみられた。
以上のことより、乾癬様病変の成立に活性化したLCが関与しており、活性化したLCの機能の1つとしてIL-23産生があることが明らかとした。

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  • Stat3 activation in epidermal keratinocytes induces Langerhans cell activation to form an essential circuit for psoriasis via IL-23 production Kimiko Nakajima, Sayo Kataoka, Kenji Sato, Mikiro Takaishi, Mayuko Yamamoto, Hideki Nakajima, Shigetoshi Sano Journal of Dermatological Science 2019; 93: 82-91.