補足解説
高知医科大学医学部附属病院“光学医療診療部”は、食生活の欧米化および高齢化社会に伴い、年々患者数の増加する食道・胃・大腸の腫瘍性疾患に対する最先端の早期内視鏡診断と内視鏡的治療を、高知県においてできるだけ多くの患者さんに提供することを主な目的として、平成14年4月1日に発足しました。スタッフは、診療部長として第一内科の大西三朗教授が兼任、副部長には第一内科の消化管グループで内視鏡を中心に診療を行ってきた田村智助教授が就任し、これに助手として大川内孝治医師が加わり、各協力科の医師との連携で診療を行っております。当光学医療診療部は、関連病院・施設を通じて高知県の大腸を始めとした内視鏡検査および治療技術の発展に多大な貢献を果たしています。
冒頭で述べました消化管の腫瘍性疾患の中でも、早期の癌はリンパ節転移や他臓器への遠隔転移がない場合が多く、内視鏡的粘膜切除法を用いて、腫瘍部分を完全に除去することで完治が期待できます。その為には、まず早期診断が非常に重要です。良性腫瘍は勿論、多くの悪性腫瘍は、自覚症状が出るまでには数カ月から数年の長い時間を要します。つまり、“症状が無いから自分は病気では無い”と考えるのは間違いで、症状が出る頃には残念ながら進行癌に至っており、内視鏡的粘膜切除法による局所のみの切除では治せない場合がある訳です。これらの症状で代表的なものは、大腸では便秘や黒色便や血便など、食道・胃では“胸のつかえ感”や上腹部〜側腹部痛や背部痛など、また食欲不振や体重減少なども挙げられます。その他、血液検査で鉄欠乏性貧血を認める場合などは、やはり食道・胃・大腸を中心に検査を行う必要があります。ただし、腫瘍性疾患以外、例えば良性の潰瘍や炎症、その他に消化管の機能性の問題などからも様々な症状を呈する場合があるので、症状が有れば必ず進行癌という訳では有りません。逆に、常習性の便秘や軽い腹痛などで受診され、検診目的で検査を行った結果、偶然に早期癌が発見されて内視鏡的治療が可能であったという場合も多く見られます。
この様に検診の重要性を認識して頂き、積極的に内視鏡による検診を受けて頂く為には、従来通りの曜日指定で、予約無しの方は後日に検査を受けて頂く体制では、適切で十分な検査・治療ができなくなってきました。2002年4月以降は、光学医療診療部において上部(食道・胃)消化管内視鏡検査は月曜日から金曜日まで、大腸内視鏡検査は火曜日から金曜日まで検査枠を広げ、来院当日の飛び入り検査も可能となりました。この様に、検査日時の選択の自由が大幅に広がったことは、受診される患者さんにとっても大きなメリットであると思います。
これから先、21世紀の高齢化社会に向けて、患者さんのQOL(生活の質)を損なわない様な、低侵襲の内視鏡的治療法がますます望まれることと思います。早期食道・胃・大腸癌に対する内視鏡的治療は、この要求に応える治療法として今後ますます需要が増大していくことが期待されています。