「バーチャル自然史博物館トップ」「プロジェクト」「土佐の魚」「遠藤広光」のページへ戻る


高知大学創立50周年記念事業委員会「海洋高知の可能性を探る」

高知新聞企業,高知.180 pp.
2005年6月19日発行 ISBN4-87503-172-6

第2部 環境編:「海につながった森,川,そして生き物」


第2章 「土佐の魚と分類学」 
〜魚類標本のデータベース化とバーチャル自然史博物館の設立準備〜
遠藤広光(高知大学理学部) pp. 80-89.

1.はじめに

 日本産の魚類ははたして何種いるのだろうか?2000年12月出版の「日本産魚類検索 全種の同定」には,352科3,887種が掲載された1).現在も魚類の分類学的研究の進行と共に,新種や初記録種が続々と報告されており,近い将来には4,000種を越えることは確実である.これは全魚類の種数の約6分の1に相当する.この種の多さは,日本列島が南北に約3,000キロと長く,寒流や暖流の影響を受けていることに起因する.流氷の海からサンゴ礁の海まで,河川や湖の淡水域,河口部の汽水域,沿岸から沖合い,大陸棚から深海底まで,日本における魚類の生息環境は極めて多様性に富んでいる.


図1.大月町柏島の造礁サンゴ群落(撮影:遠藤広光)

 高知県は太平洋に面し,その沿岸は黒潮の影響を強く受けるため,県西南端の柏島や沖の島周辺では造礁サンゴ類の群落がよく発達している(図1).また,土佐湾はすり鉢状に深くなり,南海トラフの水深4,000メートルを越える深海底へとつながる.一方,淡水域はといえば,豊かな自然が残る山間部に源を発する大小の河川がある.さらに,鏡川の注ぐ浦戸湾と四万十川下流は,広い汽水域を形成し多くの魚類の稚魚や幼魚の成育場となっている.このような多様な生息環境をもつ高知県は,魚類の研究者にとって恵まれた土地といえる.この土地柄を反映したためか,高知県における魚類分類学の歴史は古い.

2.土佐の魚類分類学と標本コレクション

  高知県は日本の魚類学にとって縁の深い土地である.日本の魚類分類学の祖といわれる田中茂穂博士(1878〜1974年)は,高知市上町で生まれた2).田中博士は1903年に東京帝国大学理学部動物学科で魚類の分類学的研究を開始し,その10年後の1913年には,D.S. ジョーダン博士とJ.O. スナイダー博士と共著で「日本産魚類目録 A catalogue of the fishes of Japan(英文)」を出版した3).これが日本人の手による日本産魚類を網羅した最初の学術論文である4).ジョーダン博士(米国スタンフォード大学)は,日本周辺のみならず世界中の魚類を研究し,多くの新種を発表した.当時の米国魚類学の中心人物である.田中博士は生涯で約350編の研究論文を発表し,その中には170あまりの新種記載が含まれる(図2)5).また,日本のみならず世界の魚類学に大きく貢献した.しかしながら,高知県出身者で日本の自然史分野の基礎を築いた植物分類学の牧野富太郎博士や地球物理学の寺田寅彦博士(田中博士とは中学時代の同級生)と比較すると,田中博士の存在はあまり知られていない.高知県の動物学に関しては,牧野植物園のような自然史博物館に相当する施設が存在しないためであろう.


図2.仁淀川で撮影されたボウズハゼ Sicyopterus japonicus (Tanaka, 1909).高知県産の標本をもとに田中茂穂博士が新種として記載した種(撮影:遠藤広光).

 高知大学理学部海洋生物学研究室の初代教授である蒲原稔治博士(1901〜1972年)は現在の高知市五台山近郊に生まれ,松山高等学校を経て1926年に東京帝国大学理学部動物学科を卒業した.その後,1928年に旧制高知高等学校教授となり,この年に同郷の田中博士に師事して魚類分類学の研究を開始した4, 5, 6).高知大学在職中に高知県の魚類に関する著書や論文を次々と発表し,その総数は149編に達した.おもに高知県で採集した標本をもとに52の新種を記載し6).1964年には,それまでの研究成果をもとに,高知県で記録された1,233種のリストを学術論文にまとめている7).蒲原博士は,土佐湾の沖合い底曳き網漁(大手繰り網)の漁獲物が水揚げされる高知市御畳瀬魚市場へ通い,多くの深海性の魚類を採集し研究した(図3,4).高知大学における深海性魚類の分類学的研究は,その後も継続され今日に至っている.また,蒲原博士は高知県沿岸の魚類のみならず,奄美大島や琉球列島で行った学術調査において多数の標本を採集し,サンゴ礁域の魚類も研究した.この後,高知県の魚類の分類学的研究は,岡村收博士(高知大学名誉教授)へと引き継がれることとなる.


図3.高知市御畳瀬魚市場(大手繰り網漁獲物)の仕分けの様子(撮影:遠藤広光).


図4.高知市御畳瀬魚市場で採集されたベニマトウダイ Parazen pacificus Kamohara, 1935.御畳瀬の大手繰り網で採集された標本をもとに蒲原稔治博士が新種として記載した(撮影:高田陽子).種の解説はこちら.

 岡村博士は,1933年に高知県高岡郡別府村に生まれた.高知大学文理学部時代に蒲原博士のもとで魚類学を学んだ(現在の海洋生物学研究室)8).その後,当時の魚類の分類学・系統学の中心であった京都大学大学院の松原喜代松博士の研究室へと進学し,
深海性のソコダラ類を専門に研究した.蒲原博士の退官後の1965年に高知大学へ着任した.岡村博士の在職中には,東京大学海洋研究所所属の調査船白鳳丸や淡青丸の調査航海,土佐湾や九州-パラオ海嶺,沖縄舟状海盆の底曳き調査,さらにはグリーンラン
ド海域や南アフリカ沖の底曳き調査など様々な調査により標本数は飛躍的に増加した(図5).そして高知大学における魚類分類学の伝統は,学部時代に岡村博士のもとで魚類学を学んだ町田吉彦博士(現教授)へと引き継がれ,今日に至っている.


図5.九州-パラオ海嶺の調査で採集され岡村収博士により新種記載されたズナガソコダラ Caelorinchus longicephalus Okamura, 1982 (ホロタイプ標本,BSKU 26144).

 蒲原博士が魚類分類学の開始とともに収集した魚類標本は,残念なことに第二次大戦時の空襲で焼失してしまった4).これらの中には,新種記載の論文中で使用された「タイプ標本(学名の基準として指定される)」も多数含まれていた.しかし,戦後ふたたび標本の収集を開始し,現在では標本総数が30万点と見積もられるほどに増加した4).これらはBSKUすなわちDepartment of Biology, Faculty of Science, Kochi University (高知大学理学部生物学科の英語表記で,現在は自然環境科学科生物科学コースへ改組された)の略号で登録され,多くの深海性魚類を含むコレクションとして魚類分類研究者の間では世界的に知られている.150万点を越える魚類標本コレクションを有する国立科学博物館(NSMT)は別格として,日本の大きなコレクションは,東京大学総合博物館(ZUMT),京都大学総合博物館(FAKU),高知大学理学部(BSKU)および北海道大学総合博物館・水産学(HUMZ)4つの大学に所蔵されている.東京大学の魚類標本コレクションは,田中博士が1904年に収集を開始し,第二次世界大戦の戦禍を逃れた貴重なものである.これには田中博士が新種記載した種の「タイプ標本」が含まれている.

 2004年1月には,日本の9つの研究機関が所蔵する魚類標本の統合型データベース「Fish Databases of Japan」がウェッブ上で公開された.現在の参加機関は,国立科学博物館,高知大学,京都大学,三重大学,北海道大学,神奈川県生命の星・地球博物館,大阪市立博物館,徳島県立博物館および横須賀市立博物館である.これは日本各地に所蔵される標本を,ひとつの窓口により検索できるデータベースとして,他国に先駆けたユニークなものだ.今回の研究プロジェクトで行ってきた標本コレクションのデータベース化は,この全国規模のプロジェクトへと連携して現在も進行中である.また,この統合型データベースには日本国内に所蔵されるタイプ標本(学名の基準となる標本)の画像データベース,標本の採集位置を地図上に示すデータベースが盛り込まれている.

3.高知県の魚類相

 蒲原博士が高知県で記録された魚種をまとめて以後,その種数の数え直しはつい最近まで行われてこなかった.2002年に出版された高知県レッドデータブック[動物編]の中で,岡村博士は高知県産魚類をおよそ1,500種と見積もっている5).今回,過去の文献とBSKU標本コレクションの調査,最近行われた高知県に関する魚類相調査(おもに柏島周辺,土佐湾深海域,土佐清水市以布利周辺,高知県レッドデータブックの汽水・淡水域)をもとに,高知県で記録された魚類の種数を集計した.その総数は1,900種を越えることが判明した.これは日本で記録された魚類の半数に近い数字である.ひとつの県における記録としては抜きん出ている.今後も新種や初記録の報告が進めば,高知県で記録される種数は確実に増えるであろう.現在は,「高知県産魚類目録」および「高知県産魚名データベース」として海洋生物学研究室のホームページで公開中である.

 蒲原博士が1961年にまとめた高知県の淡水魚類は66種,その内訳は純淡水魚31種(移入種7種を含む),回遊魚10種,海水魚25種である9).最近,高知県の汽水および淡水に生息する魚類相の調査は,岡村博士と高橋弘明氏(高知大学理学部海洋生物学研究室出身)を中心とする研究グループにより広範囲にわたって行われた.その結果は,高知県レッドデータブック[動物編]に亜種を含む216種のリストとして掲載された5).このリストには移入種(高知県に自然分布しない種)32種が含まれる.高知県に自然分布する種のうち,小卵回遊型カジカは1960年代を最後に確認されておらず,県下ではすでに絶滅したと判断された.また,高知県ではメダカが新たに絶滅危惧IB類(近い将来における野生での絶滅の危険性が高い種)のカテゴリーに加えられた.高知県といえども,宅地や道路などの開発による平野部の淡水域の環境悪化は深刻である.

 高知県の純淡水魚類相は,琵琶湖を中心とする近畿地方や瀬戸内海沿岸の西日本と比較すると貧弱であり,その種数は明らかに少ない(在来の純淡水魚は紀ノ川29種,四万十川18種,鏡川16種,安芸川10種)10).これは,太平洋に面した高知県の淡水域が,西日本の純淡水魚の種分化の中心地となった近畿や瀬戸内沿岸の淡水域と四国山地により隔てられていることに因る.さらに,高知県内では,東部の河川に生息する種数は少ない(総種数は鏡川74種,安芸川19種)10).これは河川が短く急峻で,河口部に汽水域がほとんど存在しないためである.一方,広い汽水域を有する四万十川では,そこを利用する海水魚を含め,記録された種数は161種に達する5)


図6.
高知市の鏡川下流で採集されたアカメ Lates japonicus Katayama and Taki, 1984(撮影:遠藤広光).

 高知県の汽水域に生息する魚類のうち,代表的な種としてアカメが挙げられる(図6).アカメはおもに宮崎県と高知県の沿岸や河口域に分布する日本固有種である.Katayama and Taki (1984) は,それまで東南アジアに分布する Lates calcalifer と同種とされてきた日本産のアカメを新種 L. japonicusとして発表した11).この論文で学名の基準となったタイプ標本の4個体は,すべて高知県の浦戸湾産であった(タイプ標本は1953年と1966年に採集され,国立科学博物館に所蔵されている).

 蒲原博士は1958年に,それまでに採集した標本にもとづいて浦戸湾内に出現する194種のリストを掲載した12).また,同定できない仔稚魚や幼魚を含めるとその数は300種に達するであろうと予想した.このことから浦戸湾は種の多様性が極めて高く,魚類の生育場としても重要な水域であったことがわかる.1950年代後半から1970年代にかけて,製紙工場の出すパルプ廃液により,湾内は著しく汚染されてしまう.製紙工場の廃業から今日までの間に湾内の環境はかなり回復し,汽水域や干潟にすむ魚類や甲殻類の稀少種も多く確認された.最近では釣りや漁業者に捕獲される浦戸湾のアカメの数は,四万十川河口域よりも多いようである.しかしながら,浦戸湾内では干潟の覆砂事業による新たな環境問題も発生している.これを契機に,われわれの研究室では浦戸湾の干潟を中心に動物相の再調査を開始したところである.

 高知県沿岸の浅海域の魚類相は,磯採集や釣り,漁業者が行う定置網漁,釣りや刺し網漁,底曳き網漁の漁獲物,また水産研究所の調査船こたか丸や高知大学調査船豊旗丸の行った底曳き網などにより調査されてきた.また,近年はスキューバダイビングの普及により,これまで採集が行われなかった岩礁域での採集や生態写真の撮影により,さらに多くの種が記録されるようになった.

 高知県の西南端に位置する大月町柏島や沖の島の魚類相調査は,蒲原博士により開始された13).蒲原博士は昭和3年(1928年)から毎年夏に標本採集に出掛けている.沿岸での採集方法はタイドプール採集や釣り,金突き,漁業者による「追込網」や「よせ網」,刺し網や定置網などである.蒲原博士は1960年の論文の中で,この西南部の沿岸水域で記録された魚類を約600種としている13).その後1980年代に入るとスキューバダイビングによる標本採集と水中観察により,この海域の魚類相調査はさらに進められた.平田智法氏(愛媛県宇和島市在住)らの研究グループは1969年から1996年までに柏島周辺で採集された標本と水中観察による記録をまとめ,143科884種の魚類を報告した(図7)14).また,この他に分類学的研究を必要とする約100種の存在について示唆した.沿岸域の魚類のみでおよそ1,000種という数は,驚くべきものだ.その要因は,黒潮の影響と沿岸岩礁域における造礁サンゴ類の大群落の存在にある.高知県西南端は,琉球列島や奄美諸島などの亜熱帯海域に生息する多くの浅海性魚類の分布の北限となっている.


図7.大月町柏島の水深15mで撮影されたカモハラトラギス Parapercis kamoharai Schultz, 1966(撮影:遠藤広光).種名は蒲原稔治博士に献名され,標準和名は学名に因んで付けられた.

 足摺半島付け根の東側に位置する土佐清水市以布利では,1997年11月から2000年10月にかけて,大阪海遊館,高知大学理学部および農学部,京都大学農学部の研究室が共同で沿岸域の魚類相調査を行った15).定置網(大敷網)の漁獲物,海岸での釣りや磯採集,スキューバダイビングを用いた水中観察により,136科567種が記録された.以布利周辺には,大規模な造礁サンゴ類の群落はなく,足摺半島西側の浅海域と比較すると,魚類の種数はやや少ない.

 土佐湾の沿岸で行われる小型底曳き網漁は,現在高知市御畳瀬と浦戸,須崎市,幡多郡の佐賀町や大方町の漁港で行われている.また,1985年から10年間,海洋生物教育研究センターの調査船「豊旗丸」により,土佐湾中央部の水深15〜190mまでの小型底曳き網調査を行い,多数の未記載種や初記録種を採集した8, 16).最近,井手ほか(2003)は須崎市須崎漁港に水揚げされる小型底曳き網漁の漁獲物を調査し,土佐湾のおよそ水深30〜80mに生息する底生性魚類82科187種を報告している17)

 土佐湾深海域の底生性魚類について,蒲原博士は高知市御畳瀬魚市場に水揚げされる沖合い底曳き漁(大手繰り網)の漁獲物から標本を採集し,多くの新種を記載した 6, 7).この御畳瀬魚市場での採集の伝統は現在も受け継がれ,大手繰り網漁の行われる9月から4月半ばまでの間に学生がよく出掛けている.1978年から3年間は,旧水産庁の委託を受けて高知大学理学部と北海道大学水産学部が中心となり,土佐湾とその南方海域に位置する九州-パラオ海嶺での底曳き網調査が行われた18).1980年代から現中央水産研究所の調査船「こたか丸」により土佐湾中央部の底曳き調査が行われ,現在も継続されている.1997年から2000年にかけて中央水産研究所と国立科学博物館,高知大学理学部が共同で,水深100〜1,000mまでの底曳き調査を行い,多くの貴重な標本を採集した(図8,9)19).この調査報告書には,これまで土佐湾の水深100〜1,000mで記録された140科599種のリストが掲載された.


図8.土佐湾の深海底曳き網調査で採集されたシギウナギ Nemichthys scolopaceus Richardson, 1848(撮影:海洋生物学研究室).

 土佐湾の水深1,000m以深では,東京大学海洋研究所の調査船「淡青丸」や旧海洋水産資源開発センターの調査船「深海丸」,旧水産庁の調査船「開洋丸」により底曳き網調査が行われた8).最近では,室戸沖の南海トラフ斜面の水深1,200〜4,200mで海洋科学技術センターの調査船「かいよう」が深海ビデオによる深海底生性動物調査を行い12科23種の魚類が確認された20).さらに,室戸沖水深3,572mに設置された地震総合観測システムの固定カメラ周辺からは5科7種が魚類が確認され21),深海無人探査艇「かいこう」による調査も行われた(前章「室戸沖深海底の生き物たち」岩崎望著を参照).


図9.土佐湾の深海底曳き網調査で採集されたトカゲハダカ Astronesthes ijimai Tanaka, 1908(撮影:海洋生物学研究室).相模湾産の標本をもとに田中茂穂博士が新種として記載した.種の解説はこちら.

 田中茂穂博士が日本産魚類の分類学的研究を始めてからもうすぐ1世紀となる.その間に高知県の魚類について様々な採集や調査,標本にもとづく分類学的研究が継続して行われてきたことがおわかり頂けたと思う.地域の生物相を解明するということは,容易ではない.

4.おわりに

 自然科学の中でも基礎的な分野である分類学では,標本の作成と収集,それら標本コレクションの維持や管理を,それぞれの地域や大学にある自然史系博物館が担っている.また,標本をもとにした地域の生物相の研究や教育普及活動も,自然史系博物館を中心に行われている.残念ながら,高知県には動物に関して拠点となる自然史博物館がない.例えば,高知県の昆虫類など個人が収集した標本コレクションは,その人が亡くなった後,県内には引き取るべき自然史博物館相当施設がない.そうなると他県や国外の自然史博物館がまとめて引き取ることになる.最悪の場合には,人知れずゴミとして捨てられてしまうことさえある.高知県の自然を正しく理解するためは標本が必要であり,その中心となる自然史博物館の存在は不可欠である.

 高知大学では,高知県の動植物に関する分類学や生態学,古生物学など自然史学的研究が行われており,魚類や蘚苔類については日本でも有数の標本コレクションを所蔵している.これらの研究成果や標本コレクションは,高知県の豊かな自然を理解する上でも地域に広く知らされるべき財産である.しかしながら,学内においてさえそれらの存在はあまり知られておらず,大学外からもわかりにくい状態にあった.そのため,今回のプロジェクト研究で作成した「高知大学バーチャル自然史博物館」のホームページでは,高知大学で行われている自然史学的な調査や研究,大学所蔵の標本コレクションについて紹介した.今後も標本コレクションの充実をはかり,維持管理して行くには,標本収蔵のための広いスペースと資金が必要である.現在,高知大学理学部の魚類標本の収蔵スペースは,すでに満杯の状態で整理もままならず,研究スペースも圧迫されている.大学は法人化され,自然史研究などの基礎的な分野での資金確保も困難となってきた.バーチャルでは解決できない問題に直面している.

参考文献

1)中坊徹次 編.2000.日本産魚類検索 全種の同定,第二版.東海大学出版会,東 京.lvi+1751 pp.
2)高知新聞社.1999.高知県人名辞典 新版.高知新聞社,高知.
3)Jordan, D.S., S. Tanaka, and J. O. Snyder. 1913. A catalogue of the fishes of Japan. J. Coll. Sci. Imp. Univ. Tokyo v. 33 (art. 1): 1-497.
4)Matsuura, K. 1997. Fish collection building in Japan, with comments on major Japanese ichthyologists. Pages 171-182 in T. W. Pietsch and W. D. Anderson, Jr., eds. Collection building in ichthyology and herpetology. American Society of Ichthyologist and Herpetologists, Special Publication No. 3.
5)高知県レッドデータブック[動物編]編集委員会, 編.2002.高知県レッドデータブック[動物編]--高知県の絶滅のおそれのある野生動物--.高知県文化環境部環境保全課,高知.470 pp.
6)岡村 收.1998.日本魚類学会年会特別講演資料(高知大学理学部開催).
7)Kamohara, T. 1964. Revised catalogue of fishes of Kochi Prefecture, Japan. Repts. Usa Mar. Biol. Sta., 11(1): 1-99.
8)岡村收教授退官記念事業会 編.1996.岡村收教授退官記念誌.54 pp.
9)蒲原稔治.1961.高知県の淡水魚について.高知大学学術研究報告,10 (2): 1-17.
10)岡村 收.1990.四万十川の動物--魚類.伊藤猛夫編,四万十川 <しぜん・いき もの> ,pp. 221-306.高知市民図書館,高知市.
11)Katayama, M. and Y. Taki. 1984. Lates japonicus, a new centropomid fish from Japan. Japan. J. Ichthyol., 30(4): 361-367.
12)蒲原稔治.1958.浦戸湾内の魚類.高知大学学術研究報告,7 (13): 1-11.
13)蒲原稔治.1960.高知県沖ノ島及びその付近の沿岸魚類.高知大学学術研究報告,9 自然科学I (3): 1-16.
14)平田智法・山川 武・岩田明久・真鍋三郎・平松 亘・大西信弘.1996.高知県柏島の魚類相ー行動と生態に関する記述を中心として.高知大学海洋生物教育研究センター研究報告,(16): 1-177.
15)中坊徹次・町田吉彦・山岡耕作・西田清徳(編). 2001. 以布利黒潮の魚 ジンベエザメからマンボウまで.大阪海遊館,大阪.300 pp. (Nakabo, T., Machida, Y., K. Yamaoka and K. Nishida [eds]. 2001. Fishes of the Kuroshio current, Japan. Kaiyukan, Osaka. 300 pp [In Japanese and English])
16)岡村 收・尼岡邦夫 編・監修.2001.山渓カラー名鑑 日本の海水魚(第3版).山と渓谷社,東京.784 pp.
17)井手幸子・町田吉彦・遠藤広光.2003.小型底曳き漁船による高知県須崎市沖の底生性魚類.Bull. Mar. Sci. Fish. Kochi Univ., (22): 1-35.
18)岡村 收・尼岡邦夫・三谷文夫 編.1982.九州-パラオ海嶺ならびに土佐湾の魚類.日本水産資源保護協会,東京.435 pp.(和・英文)
19)Shinohara, G., H. Endo, K. Matsuura, Y. Machida and H. Honda. 2001. Annotated checklist of the deepwater fishes from Tosa Bay, Japan. Pages 283-343 in T. Fujita, H. Saito and M. Takeda, eds. Deep-sea fauna and pollutants in Tosa Bay, Natl. Sci. Mus. Monogr. (20).
20)遠藤広光・岩崎 望・町田吉彦・岩井雅夫・門馬大和.1999.曳航体カメラによる室戸沖深海底生性魚類および甲殻類の予備調査.JAMSTEC深海研究,(14): 411-420.
21)遠藤広光・岩崎 望・町田吉彦・岩井雅夫.2000.室戸沖南海トラフ海底地震観測システム周辺の動物相.1.魚類.JAMSTEC深海研究,(17): 13-17.



(C) BSKU & H. ENDO