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2002年 8月
ヒシダイ
Antigonia capros Lowe(マトウダイ目ヒシダイ科)
日本には,ヒシダイ,ベニヒシダイ,ミナミヒシダイの3種のヒシダイ科魚類が分布します.前2種は土佐湾から採集記録があり,それらの生息水深はおよそ50〜750mとされています.高知市御畳瀬魚市場の大手繰(沖合いの底曳き網,水深はおよそ100〜300m)では,稀に採集されます.体型は写真のようにやや菱形で,体高が高く,強く側扁しており,体色は赤色からやや橙色を帯びているのが特徴です.
ヒシダイ科は現在,マトウダイ目のヒシダイ亜目に分類されています.しかし,最近行われた真骨魚類の分子系統学的研究による仮説では,マトウダイ目のもうひとつの亜目(マトウダイ亜目)に属するマトウダイ科は,意外にも側棘鰭類のタラ目と近縁とされています.一方,ヒシダイ科は棘鰭類の上位グループ内で,カワハギ科との近縁性が示唆されています.他人のそら似で,実はヒシダイ科とマトウダイ類は系統的には遠いのでしょうか?興味深いところです.以前に行われた研究では,形態学的な特徴からマトウダイ目とフグ目との近縁性が指摘されたこともあるので,マトウダイ目に含められてきたヒシダイ科のみがフグ目と系統的には近いのかもしれません.
写真標本データ:BSKU
57578 (ca. 13 cm SL), 2002年2月25日高知市御畳瀬魚市場(大手繰)で採集.
(遠藤広光)
(C) BSKU Laboratory of Marine Biology,
Kochi University