今月の魚リストへ戻る


2003年 7月
テングハギ(幼魚)
Naso unicornis (Forsskal, 1775) (スズキ目ニザダイ科 )

 テングハギはインド-太平洋の熱帯から温帯水域にかけて広く分布し,南日本のサンゴ礁や岩礁域に出現します.日本では 琉球列島から南日本沿岸にかけて,13種のテングハギ属 (genus Naso) が分布しています.本属の特徴は,尾柄部側面に左右2対の骨質板をもつこと,臀鰭棘が2本であること,腹鰭が1棘3軟条などです.成長にともない,側扁した体型は円盤状から長楕円形へ変わります.成魚の尾鰭は発達し,多くの種ではその上端と下端が糸状に伸長します.成長するにしたがい食性が藻類食から動物プランクトン食へ変化します.幼魚は海底付近に棲み藻類などを食べていますが,成魚は群をなして中層を遊泳します.
 テングハギ属のうち,成魚が前頭部に目立った角状突起をもつ種は,本種の他には,ツマリテングハギ (N. brevirostris),ヒメテングハギ (N. annulatus),そしてオニテングハギ (N. brachycentron) です.本種の種小名の unicornis「一角」の意味で,本属の英名も unicorn fish です.この角状突起は,雌雄の成魚に見られますが,オニテングハギでは雄のみにしかありません.
  写真個体は幼魚なので,円盤状の体型で,角状突起(本種では他種に比べて短い)もまだなく,尾鰭も伸長していません.本種の成魚は尾柄部の骨質板が青色ですが,この特徴もまだ現れていません(成魚の標本写真:土佐清水市以布利で採集,39 cm SL).また,写真個体の体側の斑紋は,幼魚期に特有なもので,もう少し成長すると消失します.本種は全長70cmに達し,ニザダイ科の中では大型種です.

参考文献
Kuiter, R. H. and H. Debelius. 2001. Surgeonfishes, Rabbitfishes and their relatives. A comprehensive guide to Acanthuroidei. TMC Publishing, Chorleywood. 208 pp.
Randall, J. E. 2002. Surgeonfishes of Hawai'i and the world. Bishop Museum Press, Honolulu. 125 pp.
Shimada, K. 2002. Acanthuridae. Pages 1319-1330, 1621-1622 in T. Nakabo, ed. Fishes of Japan with pictorial keys to the species, English edition.Tokai University, Press, Tokyo.

写真標本データ:BSKU 64760, 58 mm SL, 2003年6月5日, 高知県土佐清水市足摺半島払川の磯(採集・撮影:亀田和成).

(遠藤広光)


(C) BSKU Laboratory of Marine Biology, Kochi University