今月の魚リストへ戻る


2003年 11月
フリソデウオ
Desmodema polystictum (Ogilby, 1898) (アカマンボウ目フリソデウオ科 )

 先月柏島で船釣り採集を行った日の夜に,いつものように柏島の浮き桟橋と漁協近くで釣り採集を行っていました.その時に,採集者の中江雅典君(博士1年)が,薄暗がりの中で水面に漂う白いものを見つけ網ですくったところ,フリソデウオの若魚でした.柏島では,以前にも本種の若魚が記録されています(平田ほか,1996: 標本は高知高校に所蔵 KSHS 22878).また,柏島のある漁師の方によると,少し前にも獲れたとのことで,その時に撮った写真を頂きました(写真はこちら).フリソデウオ科の種は,すべて沖合いの中層域に生息しますが,その生態は知られていません.幼魚や若魚,時には成魚が稀に沿岸に漂着します.

 フリソデウオの腹鰭は,幼魚の時期には著しく伸長します.この腹鰭は成長に伴って次第に短くなります.体はタチウオのように銀色の光沢があり,うすく丸い暗色斑紋が多数あります.また,腹鰭と尾鰭,背鰭と臀鰭の大部分は鮮やかな赤色です.成魚は1mに達し,腹鰭は痕跡的となり,尾部がひも状に長く伸びます.本種の和名は,幼魚期の赤く長い腹鰭に由来すると思われます.しかし,魚類の腹鰭は四足類では足に相同なので,本当は「ナガバカマウオ」とでも呼ぶべきかもしれません.

参考文献
平田智法・山川 武・岩田明久・真鍋三郎・平松 亘・大西信弘.1996.高知県柏島の魚類相.行動と生態に関する記述を中心として.Bull. Mar. Sci. Fish., Kochi Univ., 16: 1-177.

写真標本データ:BSKU 66615, 168 mm SL. 2003年10月17日,高知県大月町柏島漁協前で採集(午後8時30分頃),採集者:中江雅典.
採集直後に柏島で撮った生存時のデジカメ写真はこちら(撮影:遠藤広光)

(遠藤広光)


(C) BSKU Laboratory of Marine Biology, Kochi University