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2004年 10月
ギマ
Triacanthus biaculeatus (Bloch, 1786)(フグ目ギマ科)

 ギマはフグ目ギマ科の魚で,インド・西太平洋の沿岸域に生息しています.ギマ科魚類は世界で7種が確認されていますが,日本に分布する種はギマのみです.ギマという魚は,あまりなじみがないかもしれませんが,浜名湖や三河湾沿岸では食用として漁獲されています.高知県では「つのはぎ」と呼ばれていますが,稀に釣りや底曳き網で漁獲される程度で食用としての価値はあまりありません.ギマは底曳き網で漁獲される時にはまとまって捕られることから,群れを形成していると考えられます.

 従来,ギマ科はベニカワムキ科と共に原始的なフグ目魚類とされていました.ところが,最近の研究では,ベニカワムキ科よりもモンガラカワハギ科やカワハギ科に近い仲間ではないかという説が唱えられました.ギマ科は,腹鰭に棘があること,顎が前方に突出可能であること等がベニカワムキ科と同様ですが,頭の骨や肩帯の骨がモンガラカワハギ科と同様の状態を示すようです.ギマ科の鱗はベニカワムキ科と似ています.しかしながら生息場所はベニカワムキ科よりもモンガラカワハギ科,カワハギ科と似ています.さて,味はどちらに似ているのでしょうか?幸い,フグ科の魚と違って,ギマ科やベニカワムキ科,モンガラカワハギ科(一部シガテラ毒に注意!),カワハギ科の魚にはフグ毒はないとされています.どなたか食べ比べをしてみませんか?新たな発見があるかも知れません.

参考文献
加納碩雄.1988.脊椎動物におけるフグ毒の分布.橋本周久(編),pp. 32-44,フグ毒研究の最近の進歩.恒星社厚生閣,東京.
Santini F, Tyler JC. 2002. Phylogeny and biogeography of the extant species of triplespine fishes (Triacanthidae, Tetraodontiformes). Zoologica Scripta 31: 321-330
Santini F, Tyler JC. 2003. A phylogeny of families of fossil and extant tetraodontiform fishes (Acanthomorpha, Tetraodontiformes), Upper Cretaceous to Recent. Zool J Linn Soc 139:565-617
鈴木克美・日置勝三・北沢博.1983.ギマ Triacanthus biaculeatus (フグ目ギマ科)の水槽内産卵と生活史.東海大学紀要海洋学部 17: 131-138
Tyler JC. 1980. Osteology, phylogeny, and higher classification of the fishes of the order Plectognathi (Tetraodontiformes). NOAA Tech Rep NMFS Circular 434:1-42
Winterbottom R. 1974. The familial phylogeny of the Tetraodontiformes (Acanthopterygii: Pisces) as evidenced by their comparative myology. Smithson Contrib Zool 155:1-201

写真個体:BSKU 61019, ca.20 cm SL, 2002年11月15日,高知県幡多郡佐賀町佐賀漁港
他の写真個体:
BSKU 58995, 2002年6月12日,高知県幡多郡佐賀町佐賀漁港

中江雅典)


(C) BSKU Laboratory of Marine Biology, Kochi University