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2004年 12月
サンゴイワシ
Neoscopelus microchir Matsubara, 1943 (ハダカイワシ目ソトオリイワシ科)

 ソトオリイワシ科は,世界で3属6種,日本では2属4種が報告され,背鰭基底部が臀鰭基底部よりも著しく前にあること,上顎が前上顎骨のみで縁取られること,主上顎骨の後端が著しく幅広くなること,上主上顎骨があること,脂鰭があることなどの特徴があります.ソトオリイワシ属は,腹中線上に1列と体側に横方向に走る数列の発光器があること,舌の縁辺部に1列の発光器があることなどで,同じ科に含まれるクロゴイワシ属と区別されます.
 サンゴイワシは,太平洋,インド洋,大西洋の暖海域に広く分布し,水深300〜1000 mの陸棚縁辺海域などの深海底近くに生息します.日本では駿河湾から東シナ海に分布しています.本種は,Matsubara(1943)により,1939年11月24-25日に駿河湾戸田沖で採集された標準体長146.8 mm の個体をもとに新種記載されました.本種は体側発光器が腹鰭より後ろでは1列となり臀鰭後方に達すること,胸鰭先端が背鰭基底後端に達しないことなどの特徴で他種と区別できます.本種は,陸棚縁辺直上に生息するため,しばしば深海底曳網で漁獲されます(川口,1998).本標本も土佐湾で底曳き網漁を行っている御畳瀬漁港で採集されたものです.従って,同目のハダカイワシ科魚類のように中層で生活し,長い距離を日周鉛直移動する種ではないと考えられます.本種は陸棚斜面に沿って海底と中深層を鉛直移動し摂餌するため,自分の影を消して身を守るための発光器を備えたと考えられます.ハダカイワシ科魚類は生物量が多く,大量に漁獲されるため,高知県では馴染みの“ヤケドの干物”として食用にされています.一方,サンゴイワシ科は生物量が少ないためか,多く漁獲されないので,なかなかお目に掛かれません.でも味はいけるそうです.ヤケドと同様に干物にすることをお勧めします.

参考文献
川口弘一.1998.ハダカイワシ目.中坊徹次・望月賢二(編),pp.55-57.日本動物大百科.平凡社,東京.
益田一・尼岡邦夫・荒賀忠一・上野輝彌・吉野哲夫(編).1984.日本産魚類大図鑑.東海大学出版会,東京.xx+448 pp., 370 pls.
Matsubara, K. 1943. Ichthyological annotations from the depth of the Sea of Japan. II. A review of the scopelid fish, referable to the genus Neoscopelus. J. Sigenkagaku Kenkyusyo, 1 (1) : 55-63.
Nakabo, T. 2002. Fishes of Japan with pictorial keys to the species English edition. Tokai University Press, Tokyo. 1xi+1749 pp.

写真個体:BSKU 73857,147.7mm SL,2004年12月1日,高知市御畳瀬魚市場(大手繰),採集者:滝上耕太・三宅崇智・片山英里.

(三宅崇智)


(C) BSKU Laboratory of Marine Biology, Kochi University