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2008年3月

キスジタマガシラ Parascolopsis tosensis (Kamohara, 1938) (スズキ目イトヨリダイ科)
 キスジタマガシラは体は桃色で、体側に2本の黄色の縦帯があること(固定標本では、眼下骨後縁の棘は微小で、その最上棘もほとんど発達しないこと、前鰓骨は鱗で被われること)によって、容易に他種と識別できるきれいな魚です。高知市御畳瀬漁港の沖合底引き漁で得られた10cmほどの標本に基づき、蒲原稔治博士によって土佐に因んだ学名が付けられ、ヨコシマタマガシラ属Scolopsisの1新種として発表されました。本種をどの属に入れるかは研究者によって違いが見られ、藍澤(2000)はタマガシラ属Parascolopsisとし、山田ら(2007)はヨコシマタマガシラ属Scolopsisとしています。ここでは世界のイトヨリダイ科について研究を行ったRussell(1990)に従いました。
 本種は小型の種のようで標準体長で10cmを越えるものは稀で、5〜8cmのものが、水深150〜200m付近から漁獲されています。土佐湾ではかなり稀な種類で、高知大学に保管されている標本は40個体ほどですが、東シナ海では調査船1網平均1〜10個体が得られており(山田ら, 2007)、稀種というほどではないようです。
 三重県・高知県・島根県浜田沖・男女群島・長崎県五島・東シナ海・台湾を経てフィリピン・インドネシアに分布しています(Kamaohara, 1958; Russell, 1990; 山田ら, 2007)。  底曳き網で漁獲されますが、小型の上に量的に少ないため、水産資源としては問題にならず、練り製品の原料などにされています。

参考文献
藍澤正宏.2000.イトヨリダイ科.Page 847-855 in 中坊徹次編.日本産魚類検索全種の同定,第2版.東海大学出版,東京.
Kamohara, T. 1938. On the offshore bottom fishes of Prov. Tosa, Shikoku, Japan. 86 pp. Maruzen Co.,Tokyo.
Kamohara, T. 1958. A catalogue of fishes of Kochi Prefecture (Province Tosa), Japan. Rep. Usa Mar. Biol. Stn. 5(1): 1-76.
Russell, B. C. 1990. FAO species catalogue. Vol. 12. Nempipterid fishes of the world. FAO fisheries Synopsis, 125(12). v+149pp.
山田梅芳.1986.キスジタマガシラ.Page 229.in 山田梅芳・ 田川 勝・岸田周三・本城康至.東シナ海・黄海のさかな.西海水研,長崎.
山田梅芳・時村宗春・堀川博史・中坊徹次.2007.東シナ海・黄海の魚類誌.lxxiii+1263pp.東海大学出版会,東京.
山川 武.1985.キスジタマガシラ.Page 511.岡村 収編.沖縄舟状海盆及び周辺海域の魚類.日本水産資源保護協会,東京.

写真標本データ
BSKU 95361,93 mm SL,2008年3月13日,御畳瀬大手操(幸成丸),採集・写真撮影:中山直英

(山川 武)


(C) BSKU Laboratory of Marine Biology, Kochi University