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2019年5月の魚


ギンカガミ Mene maculata (Bloch and Schneider, 1801)(スズキ目ギンカガミ科 )

 ギンカガミ科(Menidae)は1属1種の Mene maculata (Bloch and Schneider, 1801) ギンカガミ のみを含み,インド・西太平洋の暖海域に広く分布します( 瀬能, 2013).本属魚類は腹鰭と臀鰭起部がよく接近し,体が側扁した円盤状になり,腹鰭が非常に細長いという特徴をもちます(Friedman and Johnson, 2005 ; 瀬能, 2013).ギンカガミ属Mene Lacepède , 1803 はMene annacarolina Lacepède, 1803をタイプ種として設立されましたが,現在M. annacarolinaMene maculataの新参異名と なっています(Eschmeyer et al., 2019).
 Mene maculata は インド産の1標本に基づき記載され,そのホロタイプはインドのコルカタにあるZoological Survey of India (ZSI)に所蔵されていました . しかし,現在は 行方不明になっています(Paepke 1999).属名のMeneはギリシャ語で月を,種小名のmaculataはラテン語で斑紋 があるという意味 です(中坊・平嶋 , 2015).学名が表すように,本種の体型は半月 様で著しく側扁し,体側には2–3列の暗色斑があります.また,体は無鱗で, 腹鰭の 外側 2軟条は癒合して伸張するという特徴をもちます(瀬能 , 2013).形態的にはアジ科に近縁であると考えられていますが,研究者により分類学的位置は異なっているようです (Friedman and Johnson, 2005).Chen et al. (2002) は 12S rRNA,16S rRNA,28S rRNA,およびロドプシン遺伝子の4領域の塩基配列を解析し,用いた領域によってギンカガミの系統的位置が異なることを示しました .例えば,28S rRNAの解析では,アジ科のTrachinotus ovatusと姉妹群を形成し,一方12S rRNAと16S rRNAの解ではカマス科のSphyraena sphyraena,ダルマガレイ科のArnoglossus imperialis,およびツバメコノシロ科のPentanemus quinquariusからなる単系統群と姉妹群を形成しました.
 現生のギンカガミ属は,ギンカガミM. maculataの1種のみですが,化石種としてMene rhombea Volta,1796,Mene bologna Agassiz,1883,およびMene purdyi Friedman and Johnson, 2005の3種が知られています.M. purdyiは同属他種の最大体長が約200 mmであるのに対し,体長がかなり大きく,その神経頭蓋は90 mmと他種の3倍ほどのサイズで ,上後頭骨には 孔が ないことなどが特徴です (Friedman and Johnson, 2005).  
  写真標本は2000年4月27日に高知県土佐清水市の以布利漁港で採集されました. 市場魚貝類図鑑によると,料理法として,揚げる,ムニエル,みそ汁,塩焼き,煮つけおよび刺身などがあります.機会があればぜひ食べてみてください.

参考文献

Chen, W.J., B. Celine and L. Guillaume . 2002. Repeatability of clades as a criterion of reliability: a case study for molecular phylogeny of Acanthomorpha (Teleostei) with larger number of taxa. Molecular Phylogenetics and Evolution, 26 : 263–276.

Eschmeyer, W.N., R. Fricke and R. van der Laan. 2019. Catalog of fishes: genera,species,reference: http://researcharchive.calacademy.org/research/ichthyology/
catalog/fishcatmain.asp Electronic version accessed 29 March 2019.

Friedman, M. and G. D. Johnson . 2005. A new species of Mene ( Perciformes: Menidae) from the Paleocene of south America, with notes on paleoenvironment and a brief review of menid fishes. Journal of Vertebrate Paleontology, 25 : 770–783.

中坊徹次・平嶋儀宏.2015.日本産魚類全種の学名 語源と解説.東海大学出版部, 秦野. 372pp.

Paepke, H. J. 1999. Bloch's fish collection in the Museum für Naturkunde der Humboldt Universität zu Berlin: an illustrated catalog and historical account. Sociedade Brasileira de Ictiologia, Londrina . 216pp.

瀬能宏.2013. ギンカガミ科. 中坊徹次(編),pp. 877, 1990–1991.日本産魚類検索全種の同定 第三版. 東海大学出版会, 秦野.

ギンカガミ|魚類|市場魚貝類図鑑 https://www.zukan-bouz.com/(参照 2019-03-29).

写真標本:BSKU 87581, ca. 300 mm SL, 2000年4月27日,高知県土佐清水市以布利漁港で採集.

(幸 大二郎)


(C) BSKU Laboratory of Marine Biology, Kochi University