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病院長挨拶

病院長

高知県民に最良の医療を提供する:地域医療への貢献と高知から世界へ発信する先進的医学研究

病院長 署名

 2022年4月1日より2年間、「高知県民に最良の医療を提供する」をスローガンに掲げて高知大学医学部附属病院(以下本院)の第11代目の病院長として本院の舵取りをして参りました。このたび皆様から温かいご支援を賜り、2期目の病院長を拝命させていただきました。2024年4月1日からの2年間も何卒よろしくお願い申し上げます。

 1期目を振り返りますと、2022年度はコロナ禍で院内クラスターが多発したため、病院経営よりも「職員を守る」を最優先しました。コロナが5類に落ち着いた2023年度は過去最高の病院収益と紹介患者率を達成しました。2期目の2024年度からは病院再開発の真っ只中で、「医師の働き方改革」がスタートします。これまでの経験と実績を生かして本院の更なる発展に粉骨砕身邁進する覚悟です。

 本院は1981年に開院した40年以上の歴史と伝統を有する県内で唯一の医学部を有する特定機能病院です。これまでに4000名以上の卒業生を医師として社会に送り出し、地域医療に貢献できる優れた高度医療人を育成すると共に関連医療機関への医師派遣も含めて高知県の地域医療発展に大きな役割を果たしています。特定機能病院として医学生や医師への高等教育に留まらず、世界をリードする革新的な研究を通じて最先端医療の開発や発展にも貢献しています。

 これからも地域医療へ貢献するだけでなく、先進的医学研究も促進します。


 2期目の病院長マニフェストの要点を以下に述べます。

  1. 本院のブランド力の向上

    1. 優秀な教授を全国から集める

      2022年度から2023年度までに全国公募で9名(学内4名、学外5名)の新教授を本院にお迎えしました。2024年度から2025年度も本院の複数の診療科教授が定年退職を迎えます。これまでの人脈を生かし、Art(臨床能力)・Science(研究力)・Humanity(人間力)の3つのバランスがとれた優秀な教授を全国から集めます。近年は高齢者の多い高知県にマッチした低侵襲診断および治療に精通した候補者が教授に選考される傾向が強まってきています。研究力の評価指数となる全診療科の英語論文総数は最近の3年間は年間100編以上となり、2023年は121編で過去最多を更新しました。

    2. 大学附属病院の強みを生かした高知県民のための研究力の向上と高度医療の促進

      2022年に外科学講座内に共同研究室を設置し、近い将来高知大学の目玉となる世界に先駆けた海洋医学・海洋医療研究を推進中です。また国内の共同利用・共同研究拠点を目指した国内で初めての光線医療センターの先進的研究も促進しています。加えて高知県でも患者数が多いアルツハイマー病、フレイル、サルコペニア、がんゲノム医療、新規感染症研究にも積極的に取り組んでいきます。

      本院は高知県の社会情勢を踏まえて高齢者に優しいロボット手術の普及と適応拡大を推進中です。2012年9月に高知県で初めてダビンチSを用いたロボット手術を泌尿器科で開始しました。2017年7月に1台目のダビンチXiを導入し、2022年12月末日までに高知県では最多数、四国でも有数の1230件のロボット手術を施行しました。2022年12月に2台目のダビンチXiを導入し、現在ロボット手術件数を加速化(年間300例)しています。本院の消化器外科では2022年1月に四国で初めてのロボット支援下食道切除術、2023年4月に四国で初めてのロボット支援下肝切除術に成功しています。本院は2台のダビンチを駆使しながら泌尿器科、消化器外科を中心に呼吸器外科、産婦人科も含めて年間300件のペースでロボット支援下手術を施行しています。2024年度はハートチームによるTAVI(経カテーテル大動脈弁治療)を開始します。

      これからも高知県民のための研究力の強化と高度医療の促進に取り組みます。

    3. 高知県で働く医療人の教育と育成の強化

      高知県の地域医療を守るために医療人育成支援センター事業を促進します。従来から実施されています医学生や医療系学生を対象としたシームレスな卒前・卒後教育の強化を図り、一人でも多くの卒業生が医療人として高知県に残り、リカレント教育も含めた高知県の地域医療発展に貢献できる医療人育成システムの推進と発展に尽力します。

  2. 地域医療への貢献

    1. 地域医療に貢献できる高度医療人の育成と派遣

      地域から日本の医療の未来を拓くために2022年度より開始した高知大学(代表校)・和歌山県立医科大学・三重大学の3大学で促進しています「黒潮医療人養成プロジェクト」事業を継続します。これに加えて本院は2024年度より全国に先駆けて「臨床研究教育・人材育成センター」を新たに立ち上げ、高度医療人の育成教育を加速します。本院関連施設への医師派遣は高知大学医学部地域医療支援委員会を介して、診療科単位ではなく、病院単位で計画的に配置します。派遣先の関連施設にとってもWin、本院にとってもWinの良好な相互関係を築いていきます。

    2. 南海トラフ地震災害対策も踏まえた災害・救急医療の充実

      近年、本院の救急医療における救急車等受け入れ数は四国の大学病院の中では最多数の年間2300件を超えています。またコロナ禍では四国の大学病院で最多数の新規患者を受け入れた実績もあります。加えて本院は来るべき南海トラフ地震が発生した際の災害拠点病院として機能する責務があります。その責務を果たすために2023年度に高知大学医学部危機管理医療学講座(西山謹吾特任教授)を開設しました。「備えあれば憂い少なし」です。最大規模の被害を想定し、本院が高知県民や地域住民にとって大災害の最後の砦として機能するために、全国のロールモデルとなる最先端の災害・救急医療体制を構築します。

  3. 医師の働き方改革の推進

    2024年度より「医師の働き方改革」が始まりました。これまで大学病院の医師は診療の他にも研究や教育に時間を費やすため長時間の過重労働を強いられてきました。本院は医師の過重労働負担を減らすために、医師には医師にしか出来ない仕事に専従していただき、多職種で医師をサポートする「多職種連携によるチーム医療」を推進しながら、医療の質や安全性を向上させます。そのために医師の働き方改革をサポートする医療事務クラーク、専門・特定看護師、専門技術者等の導入も積極的に進めていきます。同時に「逆紹介」患者数の増加によるかかりつけ医との連携強化だけでなく外科系医師の労働負担を軽減するための手術の分業制も促進します。こうした本院の先駆的な取り組みは新聞等で報道され、全国から注目されています。

 高知県は健康長寿日本一を目指しています。本構想の実現は医学部を有する本院の発展なしでは実現できません。本院は「おらんくの大学病院」として多くの高知県民から愛されています。「医師の働き方改革」時代になっても、地域医療を死守し、高知県民に最良の医療を提供するための努力を継続します。これからも皆様からの温かいご支援とご協力を賜わります様、何卒よろしくお願い申し上げます。