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形成外科

形成外科は、頭部、顔面から体幹、外陰部、四肢末端に至る全ての体表面を治療対象とし、形成外科特有の縫合・移植技術や顕微鏡手術手技を用いて、身体組織の形態異常や組織欠損などの修復、再建を行います。診療を通じて皆様の生活の質 "Quality of Life" の向上に貢献することが、私たち形成外科医の目標であり、喜びです。

▼ 診療方針

あらゆる治療方針の決定には、患者さんの御意思が最大限に尊重されなくてはなりません。私たちは「手術以外の治療手段はあるか」「手術するとしたら術式は何を選ぶか」「手術のリスクや代償は」などについて患者さんにご説明し、ご理解をいただいたうえで治療を進めます。私たちは、患者さんの様々な御要望にお応えするため、学会活動などを通じて最新の知見を集積し、日々研鑽に努めています。

概 要

当科で行っている手術の一部を以下に紹介します。

【乳房・乳頭再建】

当科では、乳癌手術後の変形や欠損に対して、乳房・乳頭再建を積極的に行っています。主な再建手段としては、下腹部組織を移植する方法(腹直筋皮弁や遊離穿通枝皮弁)、背部組織を移植する方法(広背筋皮弁)、シリコンインプラントを移植する方法、などがあります。
乳房を再建するタイミングとしては、既に乳癌手術を行われている患者さんに対する二次乳房再建や、乳癌切除手術と同時に再建する一次乳房再建などがあり、乳房再建完了後には、乳頭・乳輪も再建しています。乳頭は、健側乳頭移植(複合組織移植)や局所皮弁などで再建し、乳輪は、皮膚移植や刺青で色調や質感を再現します。ご希望の方には、エピテーゼもご案内しています。

【頭頸部再建】

頭頸部癌切除後は、顔貌の変形だけでなく、呼吸、嚥下(飲み込むこと)、咀嚼(噛むこと)、表情筋動作(顔面神経機能)などの機能を失い、生活の質が大きく損なわれることがあります。これに対しては、耳鼻咽喉科・頭頸部外科、歯科口腔外科などと協力し、欠損組織に応じた皮弁による自家組織移植で再建を行っています。多用する術式には、遊離腓骨皮弁、遊離空腸移植、遊離前外側大腿皮弁、遊離腹直筋穿通枝皮弁、遊離前腕皮弁、大胸筋皮弁、DP皮弁などがあります。

【顔面骨骨折・外傷】

形成外科は、顔面の全ての骨(額、眼窩、鼻、頬、上下顎)の治療を担当します。顔の骨の骨折は、単に顔面の変形だけでなく、さまざまな機能障害(視力が落ちる、ものが二重に見える、咬み合わせがおかしい、口が開かない、顔がしびれる、皮膚の感覚がにぶい、等々)を伴うことが少なくありません。このため必ず専門的な治療が必要となります。また、単なる顔のケガでも適切な初期治療を施すことで傷跡を最小限にすることができます。不幸にして傷跡が目立つ場合でも、後日、修正手術で改善できることもありますので傷跡の大小、経過期間に関わらず、御遠慮なく御相談下さい。

【先天性形態異常】

手足(合指症、多指症など)、耳介(耳瘻孔、埋没耳、折れ耳、副耳、耳垂裂、小耳症など)、口唇・口腔(口唇口蓋裂、巨口症、巨舌症、舌小帯短縮症など)、眼瞼(先天性眼瞼下垂症)、胸郭(漏斗胸など)、腹壁(臍ヘルニア、尿膜管遺残)、外陰部(真性包茎、陰唇癒着)などの生まれつきの形態異常に対して、手術により機能や形態を正常に近づけます。

【皮膚・軟部組織腫瘍(良性・悪性)】

体表に生じた良性あるいは悪性の新生物(腫瘍)を切除する際は、根治性を追求することをもちろんですが、外観や機能の損失を最小限にする配慮も必要です。腫瘍の種類、性質、部位、大きさに応じて切除の範囲、デザイン、方向は変わりますが、切除後は、できるだけ傷跡が目立たず、かつ、拘縮(ひきつれ)が生じにくいように縫合します。病変が大きく、切除後の皮膚欠損が広範囲となる場合は、皮膚移植(植皮)、局所皮弁、ティッシューエキスパンダー(組織拡張器)法などを用いて、整容面に配慮しながら創を閉鎖します。また当科では、原則として切除した腫瘍は病理組織学的診断を行い、結果を患者さんにお伝えするようにしています。

【傷跡(瘢痕)、ひきつれ(拘縮)、ケロイド】

傷跡(瘢痕)、ひきつれ(拘縮)は、手術により改善が見込めます。術式としては、再縫合(縫いなおし)やW形成術、局所皮弁(Z形成術)などの瘢痕拘縮形成術が主ですが、ケロイド体質の方には、術後放射線照射、ステロイドの注射・貼付、トラニラスト内服などを併用し治療成績を高めています。

【顔面神経麻痺・痙攣治療】

顔面神経麻痺は様々な原因で発症しますが、表情筋の麻痺により麻痺側顔面が下垂し、上まぶたがかぶさる、下まぶたが閉じず涙が止まらない、口が閉じない、口角が下がる、鼻が詰まる、等々、様々な症状を呈し、生活の質を大きく損ないます。これらに対しては、病態に応じ、下垂組織の切除や筋膜移植によるつり上げ、筋移行術、神経移植術などを行います。また、顔面神経麻痺治癒後の後遺症としての顔面痙攣に対しては、ボトックス注射を行います。

【眼瞼下垂症】

コンタクトレンズの長期使用、花粉症やアレルギーによる眼をこする動作、白内障などの眼科手術後、加齢、などで上まぶたを上げる筋組織(眼瞼挙筋)が障害されると、上まぶたが上げられなくなり、視野が狭くなることがあります。顎を上げてテレビを見る、眉毛を上げることでまぶたを持ち上げようとする結果、額に深い皺ができる、頭痛や肩こりがひどい、などの症状の方は、眼瞼下垂かもしれません。当科では、主に挙筋前転法を用い、眼瞼挙筋腱膜を瞼板に再固定し、開瞼機能を再獲得しており、上眼瞼皮膚組織の弛緩を伴う場合は、余剰皮膚を切除するなどして外観の改善にも配慮しています。また先天性に挙筋機能を喪失している方には、自家筋膜移植により前頭筋を眼瞼縁と連結し、上眼瞼の挙上運動を再現しています。

【睫毛内反・外反症】

睫毛内反症とは、まつ毛が眼球側に向かって生えている状態で、俗に逆さまつ毛ともいわれます。まつげが眼球に接触して充血や目ヤニ、角膜障害などを起こします。毛根の向きの異常や、余剰なまぶたの組織にまつ毛が押されて内側へ向いてしまうことなどで起こり、先天性のものと加齢性変化によるものとがあります。治療としては、毛根の向きを変えるために、まつ毛のすぐ下を切開して皮膚を奥に縫い付ける手術(Hotz法)や、下眼瞼のしわ取り術に準じ、まつ毛下のたるんだ筋肉と皮膚を切除する手術などを行います。
眼瞼外反症とは、まぶたが外側にめくれている(外反)病的な状態です。完全に閉瞼できずに常時、眼球結膜、眼瞼結膜が露出することにより、流涙や充血、角結膜障害などが生じます。加齢や顔面神経麻痺、手術や外傷後のひきつれなどが原因となるものが多く、手術としては、まぶたの一部を切り取って、短縮する方法(水平眼瞼短縮術、Kuhnt-Szymanowski変法)、下まぶたに組織移植する方法(植皮術、局所皮弁術)などがあります。

【難治性潰瘍・足壊疽】

外傷、熱傷、凍傷、化学熱傷、皮膚潰瘍(静脈うっ滞性潰瘍、糖尿病性足壊疽、動脈硬化性足壊疽など)、床ずれ(褥瘡)などによる体表の難治性の創面に対し、手術(植皮、皮弁など)や局所陰圧閉鎖療法などで創傷治癒を獲得します。糖尿病性足壊疽、動脈硬化性足壊疽などに対しては、複数の診療科とともに集学的な足壊疽治療(内科による糖尿病のコントロールや動脈硬化部位の血管内治療、心臓血管外科によるバイパス手術など)を行っています。

【その他】

上記のほかに、腹壁瘢痕ヘルニア、陥入爪・巻き爪、腋臭症(わきが)、毛巣洞、膿皮症などの治療も行っています。レーザー治療や美容外科診療は行っていません。